【目次】
今や純エンジン車に乗る意味などないのか?
最近のニッポンには「ハイブリッド車にあらずんば車にあらず」的な空気が流れているかもしれません。純エンジン車なんてものは過去の遺物であり、燃費も悪い。そして近い将来、EV(電気自動車)に押されて純エンジン車は消滅してしまうに決まってる。だから今さら純エンジン車なんて、買う意味も乗る意味もない――みたいな話です。
その話には一理ある部分も多いのですが(とはいえすぐにエンジン車が消滅することはないと思っていますが)、純エンジン車には、今なおけっこうなストロングポイントがあったりもします。つまり「今さらあえて入手する意味」は、実はけっこうあるのです。
その事実を端的に表しているのが、今回おすすめする一台である「スバル インプレッサ ST」という純エンジン車です。
ひっそり販売されている「インプレッサ ST」というエンジン車
スバル インプレッサは全長4475mm×全幅1789mm×全高1450~1515mmの、トヨタ カローラ スポーツとだいたい同じぐらいのサイズとなる5ドアハッチバック。通算6代目となる現行型は2023年4月に発売されました。
で、現行型スバル インプレッサのパワーユニットは「e-BOXER」と呼ばれるマイルドハイブリッド機構付きの2Lエンジンが中心です。というかほとんどの人は、たとえ車に詳しい人であっても「今のインプレッサはe-BOXERだけ」と思い込んでいるかもしれません。
しかし現行型スバル インプレッサには、電気モーターが付いていない純粋な2Lガソリンエンジンを搭載するグレードも実はひっそりと(?)ラインナップされていて、それが今回おすすめする「ST」というグレードです。
こちらが2Lの純ガソリンエンジンを搭載するスバル インプレッサ ST。宣伝はほとんどされていないが、売れ行きは意外に悪くないらしい。
乗り出し価格はマイルドハイブリッド車の約80万円安
純ガソリンエンジンを搭載するスバル インプレッサ STの何が素晴らしいかといえば、まずは「車両価格が安い!」ということです。
現行型インプレッサは上から順に「ST-H」「ST-G」「ST」という3種類のグレードがあって、上の2つはe-BOXER(マイルドハイブリッド)を採用しています。そしてマイルドハイブリッド車であるST-HまたはST-Gの2WD車を買おうとすると、車両本体だけで約280万~約300万円ですので、乗り出し価格はおおむね300万~330万円ぐらいということになります。
しかし純ガソリンエンジンであるSTの2WD車は、車両本体価格229万9000円ぽっきり。そして乗り出し価格は、メーカーサイトのシミュレーターで計算したところによれば、オプション装備を最小限にすれば「約252万円」に収めることができます。
上級グレードであるST-Hの乗り出し価格を仮に330万円とするならば、その差は実に78万円。……これはもう「かなりデカい!」といえる価格差でしょう。
インプレッサ STのリアビュー。最廉価グレードではあるが、17インチのアルミホイールが標準装備されている。
乗り出しをもっとラクにするなら
「初期費用なし」「月々定額」オリックスのマイカーリースで
インプレッサ STの乗り出しがもっとラクに!
期間中の税金もコミコミで、管理負担も抑えられます!
-
月額のシミュレーションはこちら
車両価格の差をハイブリッド車の燃料代でカバーするのは非現実的
とはいえもちろん、マイルドハイブリッドと比べると純ガソリンエンジンは燃費性能が残念ながら劣りますので、「車両を安く買っても、燃費が悪かったら意味ないじゃん!」と思う人はいるかもしれません。
それは確かにそのとおりなのですが、78万円という価格差を「燃料代の差」で埋め合わせるのは簡単ではありません。
インプレッサの場合、ST-H(2WD)のWLTCモード燃費が16.6km/Lで、ST(2WD)のそれは14.0km/h。カタログ値どおりの燃費性能を発揮すると仮定した場合、その差は2.6km/Lです。この燃費差でもって「78万円」という差額をリカバーしようとすると、ざっと45万km走った段階で初めて元が取れることになります(※レギュラーガソリン=160円/Lで計算)。
45万kmというと……年間1万kmのペースで走る人でも45年かかりますし、都市部のユーザーに多い「年間4000kmぐらいしか走りません」という場合には、なんと112年かかってしまうことになります。
これは要するに、ハイブリッド車の若干お高い車両価格を燃料費の安さで埋め合わせるのは難しいという話であり、「純ガソリン車は総合的に見ると実は安い!」という話でもあります。
こちらはマイルドハイブリッド機構を採用している最上級グレード「ST-H」。間違いなくいい車ではあるのだが、その乗り出し価格は約330万円。STとの価格差を燃料費でカバーしようとすると、ざっくり100年以上はかかる計算に?
純エンジン車ならではの「軽さ」も大いなる魅力!
そしてもちろん、純ガソリン車であるスバル インプレッサ STの美点は「安い」というだけではありません。実はこの車、いわゆる走りがとっても気持ちいい一台なのです。
筆者は現行型スバル インプレッサのマイルドハイブリッドグレードをショートサーキットで試乗し、「なんて素晴らしい走りなんだ!」と感銘を受けました。絶対的な速度は大したことないのですが、とにかくイメージどおりに加減速でき、そしてイメージどおりにカーブを気持ちよく曲がれる――というのが、マイルドハイブリッドシステムを採用している現行型インプレッサの印象です。
しかし佐渡島というところで試乗した純ガソリンエンジングレード「ST」は、それ以上の衝撃でした。
「イメージどおりに加減速でき、イメージどおりに曲がれる」という基本部分についてはおおむね同じなのですが、あいまいな表現で恐縮ですが「それぞれの気持ちよさ/軽快感」みたいなものは、純ガソリンエンジン車であるSTのほうがおおむね2割増しだったのです。
これはおそらく「純エンジン車ならではの軽さ」に起因する気持ちよさなのでしょう。
2Lエンジンのほかにモーターやバッテリーなどの重量物も搭載しているマイルドハイブリッドグレードは、車両重量が1.5tを超えています。具体的にはST-Gが1530kgで、ST-Hが1540kgです。それに対してシンプルなガソリンエンジンだけを積んでいるSTの車両重量は1380kg。その差は「大相撲の力士1人分」といえる150kg~160kgです。力士1人分の重量差が車の運動性能にどれほどの悪影響または良い影響をもたらすかは、自分の車に何人かの人を乗せて運転した経験がある人ならば、容易にイメージできるのではないかと思います。
さらにスバル インプレッサ STは、同じ2Lエンジンでもe-BOXER車に搭載されている2Lエンジンより若干パワフルなタイプが採用されていますので、「高出力×低重量」という簡単な掛け算により、胸のすく走りが可能になっているわけです。ちなみにSTはタイヤ幅が他のグレードより若干細いというのも、軽やかな身のこなしの理由でしょう。またこの軽さと細さは、「純エンジン車だが、決して燃費が極悪なわけではない」という部分にも貢献しているはずです。
見た目がレンタカーっぽいのは最大の弱点だが
以上のとおり「安くて、そして走りが良くて!」というスバル インプレッサ STなわけですが、当然ながら物事には必ずメリットとデメリットが同居していますので、インプレッサ STにもデメリット=イマイチなポイントはあります。
スバル インプレッサ STのイマイチなポイントは「見た目がレンタカーっぽい」ということです。
他のグレードでは標準装備となるLEDフロントフォグランプは付いておらず、ハンドルも標準は本革巻きではなく、昔なつかしのウレタン丸出し。シフトレバーにはブーツも付いてない状態で、インプレッサのインテリアをおしゃれに引き締める11.6インチの縦型センターディスプレイも、標準状態では装着されていません。上位グレードにある装備がないため、「なんとなくレンタカーっぽい」といえる雰囲気とビジュアルになってしまっています。
あまりにも簡素な、スバル インプレッサ STのインテリア。アイサイトなどの「本当に必要な装備」は上位グレードと共通だが……。
こういったポイントは、購入時にメーカーオプションを加えることである程度リカバーできるのですが、そうするとSTならではの「安さ」という美点が若干損なわれてしまいます。このあたりが、スバル インプレッサ STという車の最大の弱点であり、微妙なポイントでしょう。
しかし、もしもそのあたりがあまり気にならないのであれば――単眼式カメラを追加した3眼式の最新世代アイサイトはSTでも標準装備ですし、ウインドウのUV(紫外線)&IR(赤外線)カット性能や遮音機能も上位グレードとの差はなし。シートも、中間グレードであるST-Gと同じです(※表皮のデザインだけはちょっと違いますが)。
つまり「車として基本となる部分」には何ら問題なしといえるインプレッサSTですので、「ホンモノの格安普通車」を求めている人だけには、ぜひとも強くおすすめしたい次第なのです。
ここまでちゃんとしている普通車が「総額250万円ちょい」で入手できるというのは、すべての物価が上がり続けている現代の日本においては“奇跡”と言えるかもしれません。
乗り出しをもっとラクにするなら
「初期費用なし」「月々定額」オリックスのマイカーリースで
インプレッサ STの乗り出しがもっとラクに!
期間中の税金もコミコミで、管理負担も抑えられます!
-
月額のシミュレーションはこちら
「なんとなくレンタカーっぽい」といえる雰囲気とビジュアルがさほど気にならないという人は、さらなる詳細をぜひ各自でチェックしてみてください。
-
執筆者
伊達軍曹 - 外資系消費財メーカー勤務を経て出版業界に転身。自動車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。以来、有名メディア多数で新車および中古車の取材記事を執筆している。愛猫家。
- <公開日>2024年1月16日
- <更新日>2024年1月16日