ダイハツ タントは、カーマニアである不肖ワタシも納得できる“本格派”だ!(MJブロンディ)【プロが選ぶ今おすすめの一台】

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我が家には自家用車が3台ある。カーマニアゆえ、うち2台は輸入車(フェラーリ 328GTSとプジョー 508)で、国産車はダイハツ タントの1台だけだ。

フェラーリはカーマニアにとって究極の夢。プジョー 508はちょいワルなスタイリングがいかすフレンチセダンで、どちらもマニアじゃなかったらまず買わないクルマと言っていい。

じゃなぜあと1台はダイハツ タントなのかというと、そこには深い訳がある。

MJブロンディ氏が購入した「ダイハツ タント」の同型車

タントの走りはライバルより断然……というほどではないが、明らかにイイ!

初代ダイハツ タントは、軽スーパーハイトワゴンの草分けとして発売された。ちょうど20年前のことである。

当時はスズキ ワゴンRなどの「ハイトワゴン」が軽の主流だったが、それよりもさらに10センチほど天井を高くして、ボディもできるだけ真四角に取り、極限まで室内空間を広くしたのがダイハツ タントだった。

タントは、室内の広さがバカウケして爆発的なヒットになった。その市場にホンダ N-BOXやスズキ パレット(のちにスペーシアに交代)も参入し、いつの間にか軽自動車の主流になったというわけだ。

現在の売れ行きはホンダ N-BOXがダントツであり、かなり離れてダイハツ タントとスズキ スペーシアが2位を争っている。しかし私は、1年ほど前に家庭の事情で軽スーパーハイトワゴンを買わねばならなくなった際、迷わずタントを選んだ。

理由は、3車の中で、走行性能に関してはタントが断然……いや断然は言い過ぎか。かなりリードしていたからだ。

タントは……走りがイイ? 写真は「タント カスタム」

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ダイハツ タント

重心が高くて本来不安定なクルマだからこそ「操縦性の良さ」が重要になる

エンジン性能は3車ともほぼ互角だが、違うのはボディの骨格であるフレームと、そこに取り付けられるサスペンションだ。フレームとサスペンションで、直進安定性や操縦性が決まってくる。そのうち、特にカーブでの操縦性関して、この3車の中でタントがもっとも優れていた。

カーブでもあまり車体が傾かず、安定して駆け抜けてくれる。街中を普通に走っていたらほとんど違いはないが、たとえば首都高のような曲がりくねった道を走る場合は、タントが一番気持ちよく、楽しく走ることができた。

軽スーパーハイトワゴンをそんな視点で選ぶ人はほとんどいないだろうが、重心が高くて本来不安定なクルマだからこそ、操縦性はかえって重要だ。重心の高いプロポーションで、すでに大きなハンデを負っているのに、車体や足回りの出来も悪かったら、走行中は我慢の連続になってしまう。だから私は、カーブでの操縦性が一番しっかりしているタントを選んだのである。

重心が高く、不安定になりやすい軽スーパーハイトワゴンだからこそ「カーブでの操縦性の良さ」が重要になってくると、MJブロンディ氏は言う

現行型のダイハツ タントは操縦性がいいだけではなく、乗り心地もいい。カーブで車体があまり傾かず、タイヤがしっかり路面を掴んでくれるのに、サスペンションは適度にソフトなのだ。サスペンションを固めればカーブでの安定性は簡単に出せるが、乗り心地の良さとカーブでの安定性を両立させるのは難しい。

つまりタントは、車としての出来がホンモノなのである。こういう車でカーブを攻める人もいないだろうが、カーマニアとしては、いかにも遅そうな車で、カーブを安定して速く駆け抜けることに密かなヨロコビを感じている。車選びとは、すべて自己満足なのですね。

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ダイハツ タント

SUVテイストの「ファンクロス」よりも「素のタント」のほうがセンスは良好

がしかし現行型タントは、販売面ではやや苦戦している。

ちなみに先代タントは2013年に発売され、翌年の2014年にはホンダ N-BOXを抜き、販売台数1位に輝いた。

実は先代タントは、現行型に比べると、走りに関して、すべてがかなり劣っていた。サスペンションは固くて乗り心地が悪く、カーブでも安定感に欠けた。それなのに販売は好調で、すべてが改善された現行型は逆にやや不調。こういう車の場合、走行性能は売れ行きとほとんど関係ないことを思い知らされる。

タントの不調は、ダイハツにとって誤算だった。2019年までのダイハツの軽自動車販売台数はスズキを上まわってトップだったが、タントが現行型へモデルチェンジした2020年以降は、軽乗用車部門でスズキに抜かれている。

そこで抜本的な販売のテコ入れが必要になり、昨年10月、タントはマイナーチェンジを受けた。最大の注目点は、SUVスタイルの「タント ファンクロス」の追加だ。また従来から用意されているタントカスタムも、フロントマスクのデザインを先代のようなオラオラ感の強いものに変えた。これによってタントの売れ行きは若干回復し、2022年にはスズキ スペーシアを抜き返して、軽販売台数2位の座を奪還した。

2022年10月に追加されたSUV風デザインの「タント ファンクロス」

こちらは上級ラインとなる「タント カスタム」

個人的には、タント ファンクロスのSUVテイストは取ってつけた感が強く、タント カスタムのオラオラ顔は、完全に先祖返りでセンスのカケラもないように見える(私見です)。ユーザーがそれを望んでいたのだから文句を付ける筋合いはないが、私が思うタントの良さは、カーブでの操縦性と、その割にとても乗り心地がいい点、次いで非カスタム系のスタンダードモデルの「素」な感じのデザインや、2トーンカラーのシトロエン的なセンスの良さである。

ちょっとフランス車的なセンスも感じさせる、「タント」の2トーンルーフ仕様

買って間違いのない車であることは、オーナーの私が保証する!

私はクルマにこだわりを持つカーマニアだが、ダイハツ タントの走りには、基本的に満足している。ノンターボモデルで車両重量も重いので加速はかなりトロいが、実際に強い加速が必要なシーンは、首都高の本線に合流するときぐらい。それも、アクセルを床まで踏まなくてもなんとかなっている。

普段のタントの乗り味は非常にフラットで、滑るように走る。カーブでは粘りに粘り、カーブの途中でハンドルを切り足しても、しっかり反応してくれる。

また、4月からはアイドリングストップのない仕様が追加設定されるという発表があった。これは世界的な半導体不足に対応したもので、半導体の使用個数を抑えて納期を早めるのが目的だ。アイドリングストップなし仕様の価格は、アイドリングストップ付きに対して一律3万3000円安となる。

個人的には、アイドリングストップは燃費向上という「利」よりも「害」のほうが大きいと考えている。アイドリングストップが付いていると、信号待ちの多い市街地走行では数パーセント燃費を改善できるが、アイドリングストップ中はエアコンが切れるため快適性が犠牲になるし、エンジン始動時の「キュルキュルブーン」という音も耳障りだ。

加えてバッテリーに負担がかかるため、アイドリングストップに対応した耐久性の高いバッテリーを装備する必要があり、その高いバッテリーも、使い方によっては劣化が早い。バッテリー交換を行えば、節約したガソリン代などすぐ足が出る。つまり、かえってエコではない可能性がある。

私は自家用車のタントに乗る際は、いちいちアイドリングストップを切って乗っているが、これが意外とわずらわしい。最初からアイドリングストップがついていないタントが発売されるのは歓迎だ。

というわけでダイハツ タントの良さは、一般ユーザーにとってどうでもいい(?)部分にあるわけだが、買って間違いのない車であることは、オーナーの私が保証する。

ちなみにタントのオリックスリースでのリース料は、2WD Lの2トーンカラー、カーナビなし、ETC、前後ドラレコ、フロアマット付きの「いまのりセブン」で2万7720円/月となっている。

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ダイハツ タント

執筆者
MJブロンディ(清水草一)

1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。代表作『そのフェラーリください!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高はなぜ渋滞するのか!?』などの著作で道路交通ジャーナリストとして活動。
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  • <公開日>2023年5月8日
  • <更新日>2023年5月8日
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