2013年の登場以来、ベストセラーとなっていたコンパクトSUV「ホンダ ヴェゼル」が今年4月、初めてのフルモデルチェンジを受けて2代目へと進化を遂げました。
ここでは、実用性もデザイン性も大幅に向上した新型ホンダ ヴェゼルの概要と特徴を、なるべくわかりやすくご紹介します。
使いやすいサイズ感は維持しつつ、クーペ的なカッコよさを獲得
新型ホンダ ヴェゼルのボディサイズは初代より35mm長く、20mm幅広になりましたが、全長4330mm×全幅1790mm×全高1590mmという、日本の道でも扱いやすいサイズ感は依然としてキープされています。
そして全長が若干長くなったことで、もともと伸びやかだったフォルムはさらに伸びやかとなり、Cピラー(ボディ後端の柱)の角度が初代以上に寝ているため、より「クーペ的なカッコよさ」を感じさせるフォルムに仕上がっています。
さらに特徴的なのは、ボディカラーと同色となるフロントグリルです。一般的に、車のフロントグリルというのは「銀色または黒」にするのがお約束ですが、新型ヴェゼルはあえてお約束を無視したことで、得も言われぬ“雰囲気”をまとうことに成功したと言えるでしょう。
シンプルビューティなインテリアは後席も広くなった
新型ヴェゼルは、インテリアもなかなかしゃれています。
ホンダ独自の「センタータンクレイアウト」による広々とした空間のなかにあるシートやハンドル、計器類などのデザインは、細かいデザインや色はグレードやオプションによって異なるものの、全体として「シンプルな美しさ」を基調としています。
ひと昔前までの国産車のインテリアは、「カッコよく見せよう」「高級に見せよう」という思いが空回りし、単にゴテゴテとしたデザインになっているものも多かったのですが、新型ヴェゼルのインテリアは、それとは対極の「シンプルビューティ」と言える雰囲気を持っています。
またそういった雰囲気の問題だけでなく、後席の足元とヒザまわりの空間は先代と比べて35mmずつ広くなっていて、背もたれの角度も2度大きくなっています。そのため新型ヴェゼルの後席は、先代以上に「リラックスできる空間」になっているのです。
エンジンは1.5Lガソリンとハイブリッドの2種類、ハイブリッドはさすがの好燃費
新型ホンダ ヴェゼルに搭載されるパワーユニット(動力源)は、ガソリンエンジンとハイブリッドの2種類。
ガソリンエンジンは1.5Lのノンターボで、118psという程よい最高出力を発生させるタイプです。組み合わされるトランスミッションはスムーズなCVT(無段変速機)で、FF車のWLTCモード燃費は17.0km/Lと、まずまず優秀。
一方のハイブリッドは、「e:HEV」というホンダ独自のハイブリッドシステムを採用しています。
e:HEVというのは、1.5Lエンジンのほかに「発電用」と「走行用」という2つの電気モーターを搭載し、走行状況に応じて「EVドライブモード(電気モーターだけで走るモード)」と「ハイブリッドモード(モーターの力とエンジンの力をミックスさせるモード)」、「エンジンドライブモード」という3つのモードが、自動的かつ最適に切り替わるというものです。
こちらのWLTCモード燃費はFF車の場合で24.8~25.0km/Lで、「さすがはハイブリッド!」と言える良好な燃費性能となります。
進化した安全運転支援システム、抜かりなしのコネクト技術
安全運転支援システム「ホンダセンシング」は、新型ヴェゼルの全車に標準装備されています。
先代のヴェゼルは、フロントの「単眼カメラ」と「ミリ波レーダー」というものでさまざまな情報を計測していました。新型はフロントに新開発の「曇り防止ヒーター付きワイドビューカメラ」を採用、画像処理システムも高速化することで、ミリ波レーダーを廃止した進化版になりました。さらに前後バンパーにはそれぞれ4つずつの「ソナーセンサー」を搭載しています。
これによりシステムが認識する範囲と方向が拡大され、アダプティブクルーズコントロールや車線維持支援機能が大幅に進化したほか、新たに「後方誤発進抑制機能」や「近距離衝突軽減ブレーキ」なども使えるようになったのです。
また流行りの「コネクト技術」に関しても抜かりはありません。
車載通信モジュールを備えた「ホンダコネクトディスプレイ」搭載車では、自分の車の周辺や、ナビに入力した目的地周辺のマップデータが自動で更新されるほか、車から離れた場所でも、スマホを介してドアのロックやエアコン操作などが可能になっています。
ベースグレードでも十分だが、やはりヴェゼルはハイブリッドを選びたい
新型ホンダ ヴェゼルのグレードラインナップは下記のとおりです。
【ガソリン車】
●G|227万9200円(FF)/249万9200円(4WD)
【ハイブリッド車】
●e:HEV X|265万8700円(FF)/287万8700円(4WD)
●e:HEV Z|289万8500円(FF)/311万8500円(4WD)
●e:HEV PLaY|329万8900円(FF)
ガソリンの「G」とハイブリッドの「e:HEV X」がいわゆるベーシックグレードで、「e:HEV Z」は18インチアルミホイールやヒーター付き本革巻きステアリング、合皮とファブリックのコンビシートなどの上級装備が付く中間グレード。
そして「e:HEV PLaY」は、ホンダコネクトディスプレイやパノラマルーフ、スマートフォンのワイヤレス充電器などのほか、「グレージュ」という明るい色調のインテリアを採用した最上級グレードです。
安全運転支援システム「ホンダセンシング」は全車標準装備ですし、最廉価グレードであるガソリンの「G」でも、基本的な快適装備はほぼすべて標準で付いています。そのため、新型ヴェゼルを買う場合は「どのグレードを選んでもOK」と言うことはできるはずです。
しかし、せっかくしゃれたデザインになった新型ヴェゼルに乗るのであれば、ホンダ自慢のハイブリッドシステムである「e:HEV」の魅力と威力を味わうほうが、より素敵かもしれません。
そしてe:HEVを選ぶのであれば、車格的には「ハンズフリーアクセスパワーテールゲート(手を使わずにテールゲートの開閉が行える機構)」などもあったほうが、のちのち満足できるような気はします。
その意味では――もちろんご予算とお好み次第ではあるのですが――さしあたってのおすすめグレードは「e:HEV Z」または「e:HEV PLaY」ということになりそうです。
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執筆者
伊達軍曹 - 外資系消費財メーカー勤務を経て出版業界に転身。自動車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。以来、有名メディア多数で新車および中古車の取材記事を執筆している。愛猫家。
- <公開日>2021年7月1日
- <更新日>2021年7月1日