新型スペーシア/スペーシアカスタムの概要
人気の軽スーパーハイトワゴンがついにフルモデルチェンジ
スズキ スペーシアは、その初代モデルは2013年にデビューした人気の軽スーパーハイトワゴン。標準モデルに加えて上級ラインに相当する「カスタム」をラインナップし、2018年にはSUVルックの「スペーシア ギア」が、そして2022年には商用車扱いとなる「スペーシア ベース」という派生モデルがモデルラインナップに加わっています。
そんなスズキ スペーシアおよびスペーシア カスタムが2023年11月9日、3代目へとフルモデルチェンジされました。
3代目となる新型は、人々の暮らしの変化や嗜好の多様化、車を取り巻く環境の変化に合わせてデザインと機能をブラッシュアップ。乗る人すべての日常を「もっと楽しく、便利に、快適に!」するクルマを目指しているとのこと。
ここでは、そんな新型スズキ スペーシア/スペーシア カスタムの気になる全貌について、実車を撮影した写真を交えなるべくわかりやすく整理してみることにしましょう。
外観
デザインモチーフは「コンテナ」に変わり、カスタムは落ち着いた雰囲気に
先代(2代目)モデルのデザインモチーフは「スーツケース」でしたが、今回は「もっと自由に」「もっと使いやすく」との思いから、デザインモチーフには頑丈で大容量な「コンテナ」を選択。頑丈なコンテナのプレス面を連想させるボディサイドの形状や、工業製品にしばしば見られる「角を面取りしたような造形」を取り入れたデザインとなっています。
標準モデルである「スペーシア」は、ボディを上下に分割する力強いキャラクターラインによって「頑丈で立体的な造形」が表現されていますが、それと同時に、優しい印象のLEDヘッドランプを配することで「親しみやすさ」も表現されています。
こちらは標準モデルである「スペーシア」の写真。ボディカラーは新色のトーニーブラウンメタリック ソフトベージュ2トーンルーフ。
またボディカラーにも、まるで春に咲く花のような柔らかみのある色を表現した「ミモザイエローパールメタリック」や、使い込んだ革製品のような深みのある色を表現した「トーニーブラウンメタリック」を新色として設定。さらに2トーンルーフ仕様車のルーフ色に「ソフトベージュ」を採用することで、柔らかさと同時に「今どきな感じ」が強調されることになりました。
「スペーシア カスタム」は、メッキと艶のあるブラックを組み合わせた大型のフロントグリルや、メッキフロントバンパーガーニッシュなどをフロントマスクに採用。少々やりすぎだった(押し出し感が強すぎた)印象もある先代のスペーシア カスタムと違い、「上質感と存在感」を感じさせるフロントマスクに変わったといえるでしょう。
こちらは「スペーシア カスタム」の写真。ボディカラーは新色であるインディゴブルーメタリック2 ブラック2トーンルーフ。
そして内部をブラック化した薄型フルLEDヘッドランプとLEDフロントシーケンシャルターンランプは絶妙に華やかな印象を作り上げており、クリスタル感のある肉厚インナーレンズのリアコンビネーションランプも、新型スペーシア カスタム全体の華やかさに貢献しています。
ボディカラーは「ピュアホワイトパール」や「インディゴブルーメタリック2」をはじめとした上質感のあるカラーを採用し、モノトーン7色とブラック2トーンルーフ4色の、全11パターンが設定されています。
内装
先代スペーシアのインテリアは、スーツケースを模したフタ付きの巨大な収納スペースが特徴でした。しかし新型ではそのフタを取り払い、広々としたオープントレイに一新。「コンテナっぽさ」は助手席前方の引き出し部分と、ドアアームレストの形状で表現されています。
スペーシア HYBRID Xのインパネまわり。
合計3つのUSBポートやドアパネル上部のスリット状の小物入れ、メーターフード上部にはオープントレイを配置し、電動パーキングブレーキを採用するなど、新型スペーシアは装備面も強化。デジタル式のスピードメーターと、カラー化したマルチインフォメーションディスプレイを組み合わせたメーターパネルも印象的です。
標準モデルであるスペーシアのインテリアは「ブラウン×カフェラテ」という、優しい組み合わせのカラーコーディネート。アクセント部分にはマットな質感の素材を、助手席側のオープントレイには帆布のような質感のパイル添加樹脂を使うことで変化を付けています。シート表皮はグレージュのカラーメランジ(混合糸)です。
スペーシア HYBRID Xの居住空間はこのような雰囲気。
一方のスペーシア カスタムは「ホテルのラウンジのような室内空間を志向した」とのことで、セミマットのボルドーとピアノブラックの樹脂で全体をコーディネート。シート表皮はボルドーとブラックを組み合わせたファブリックを中心に、上位グレードでは一部に合皮が採用されています。
ボルドーとピアノブラックで上質な雰囲気を作り上げているスペーシア カスタムのインパネまわり。
スペーシア カスタム HYBRID XSターボのシートは一部に合皮を使用している。
インテリアにおける機能面で最大の特徴となるのが、後席の座面先端で可動する「マルチユースフラップ」です。これは、着座時は角度を調整して脚のサポートやオットマン的に使えるほか、座面に買い物かごなどを載せた場合には上、向きにセットすることで荷物のストッパーとしても機能します。
マルチユースフラップをオットマンモードにしてみた写真。他にも、シートに載せた荷物のストッパーとして使うこともできる。
さらにはiPadなどのタブレット端末を立てかけられる新形状のピクニックテーブルや、フラップ形状を見直した天井サーキュレーター、サイズを拡大した乗降グリップなど、後席空間のユーティリティ性は格段に強化されています。またパワースライドドアには、ドアを閉めている途中に、携帯リモコンやフロントドアとバックドアのリクエストスイッチからドアロックを「予約」できる機能が加わっています。
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走行性能
新型スズキ スペーシアに搭載されるパワーユニットは、最高出力49psの自然吸気エンジンと、同64psのターボ付きエンジン。全車マイルドハイブリッド機構付きというのは先代モデルと同様ですが、高効率化と軽量化によって燃費向上に貢献する新設計のCVT(無段変速機)が採用されています。2WD車のWLTCモード燃費は自然吸気モデルが23.9~25.1km/Lで、ターボモデルが19.8~21.1km/Lです。
またそのほかではエンジンルームとボディとの間に防音材を効果的に使うことで、耳障りなエンジン音や風切り音、ロードノイズなどを低減。先代モデル以上に静かで快適な空間が実現されているというのも、新型スペースならびにスペーシア カスタムの特徴です。
安全装備
新型スペーシア/スペーシア カスタムは先進安全装備の内容も大いに充実しています。
前方認識用のセンサーをステレオカメラから単眼カメラ(認識画角は従来型の2.6倍)に変更し、フロントには新たにミリ波レーダーを追加。これにより、アダプティブクルーズコントロールにはカーブの手前で速度を自動的に抑制するカーブ速度抑制機能や、割り込み車への接近警報機能が付くことになりました。また電動パーキングブレーキが新たに採用されたことで、これまでは実現できていなかった「渋滞時の停止保持」も可能になっています。
さらに、センサーの進化によって先行車の軌跡情報や縁石、ガードレールなどを認識できるようになったため、車線維持支援機能や車線逸脱抑制機能についても従来型より高性能になっています。
そのほかの基本的な部分では、フロントのピラー(柱)を細くすることで前方視界が広がり、交差点右左折時の横断歩行者や交通状況がより把握しやすくなりました。またハンドルの左側にマルチインフォメーションディスプレイ操作用の十字スイッチを搭載したことで、ハンドルから手を離さずにディスプレイ内の表示コンテンツの切り替えなどができるようになったというのも、安全な運転には地味に大きく寄与する部分です。
フロントのピラー(写真右側の柱)を細くしたことで、新型スペーシアの前方視界は格段に向上している。
グレード構成
2023年11月下旬現在、新型スズキ スペーシアならびにスペーシア カスタムのグレードラインナップと、それぞれの車両価格等は下記のとおりです。
グレード | パワーユニット | 駆動方式 | WLTCモード | 車両本体価格(税込) |
---|---|---|---|---|
HYBRID G | 自然吸気エンジン (マイルドハイブリッド) |
2WD | 25.1km/L | 153万100円 |
4WD | 22.4km/L | 165万6600円 | ||
HYBRID X | 2WD | 23.9km/L | 170万5000円 | |
4WD | 22.4km/L | 182万4900円 |
グレード | パワーユニット | 駆動方式 | WLTCモード | 車両本体価格(税込) |
---|---|---|---|---|
HYBRID GS | 自然吸気エンジン (マイルドハイブリッド) |
2WD | 23.9km/L | 180万1800円 |
4WD | 22.4km/L | 192万5000円 | ||
HYBRID XS | 2WD | 23.9km/L | 199万5400円 | |
4WD | 22.4km/L | 211万5300円 | ||
HYBRID XSターボ | ターボ付きエンジン (マイルドハイブリッド) |
2WD | 21.9km/L | 207万3500円 |
4WD | 19.8km/L | 219万3400円 |
上記のうち標準モデルの上級グレード「スペーシアHYBRID X」は、電動パーキングブレーキやアダプティブクルーズコントロール(ACC)などがセットになった6万6000円のメーカーオプション「セーフティプラスパッケージ」を装着可能です。スペーシア カスタムは、電動パーキングブレーキとアダプティブクルーズコントロールは全車標準装備です。
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まとめ
先代スペーシアもデザインと使い勝手が良く、さらには走りも良い車でしたが、新型はさらにデザインと使い勝手が磨かれ、さらには先進安全装備をつかさどるセンサーの種類と性能も大幅に進化しました。そのため新型スズキ スペーシアは、軽スーパーハイトワゴンを必要とするすべての人にとって「まずは絶対に購入候補に入れて検討すべき一台」になったといえるでしょう。
また従来型ではフロントマスクの押し出し感がやや強すぎた印象もあったスペーシア カスタムも、程よい上質感と存在感を主張するデザインへと変貌を遂げています。
スぺーシア カスタムの車両価格はやや高めとなりますが、その分だけ装備や質感は標準モデル以上になっていますし、長距離を走る際には頼もしい存在となる「ターボ付きエンジン」を選択することも可能です。
その意味で、もしもこれから最新世代の軽スーパーハイトワゴンを入手しようと考えるのであれば、カスタムも含めた「新型スズキ スペーシアシリーズ全体」をチェックしながら、自分のライフスタイルに合った一台を探し出すことが肝要となるでしょう。
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執筆者
伊達軍曹 - 外資系消費財メーカー勤務を経て出版業界に転身。自動車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。以来、有名メディア多数で新車および中古車の取材記事を執筆している。愛猫家。
- <公開日>2024年1月16日
- <更新日>2024年1月16日