【人気車ヒットの理由】“本物”ならではの機能とデザインで人々を魅了!「スズキ ジムニー」

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ジャンルを問わず「人気商品」には、人気を博すだけの理由=良いところが必ずあるものです。そしてそれは「車」においても同様で、大ヒットしている車にはほぼ必ず、ヒットするだけの理由=美点があります。

このコーナーでは「今、かなり売れてる車」1車種をピックアップし、その「売れてる理由」を明らかにしてまいります。

第2回となる今回は、発売から約3年が経過した今なお「納車待ちの長い行列」が続いている4代目の「スズキ ジムニー」です。

人気がありすぎて、新車の納車はいまだ約1年待ち

人気がありすぎて、新車の納車はいまだ約1年待ち

まずはスズキ ジムニーという車についての簡単なおさらいから。

スズキ ジムニーは、もともとは1970年に登場した軽自動車規格の四輪駆動車。山岳地域や豪雪地帯などでさまざまな作業を行う人のための「はたらく車」として開発され、大ヒットしました。しかし、その強烈な機動力の高さはアウトドアを楽しみたい人にとってもうってつけであったため、「一般ユーザーがレジャーのために使う車」としても愛用されるようになったのです。

1970年に誕生したジムニーはその後モデルチェンジを重ね、現在は2018年7月にデビューした4代目のジムニーが、新車として販売されています。

現行型のスズキ ジムニーは、昔から続くオフロード車に最適な「ラダーフレーム式」という構造を進化させたうえで踏襲し、駆動方式も、悪路走行には最適な「パートタイム4WD」という方式を採用している、まごうことなき本格オフローダーです。

しかし現行型は、それまでの歴代ジムニーと違って「先進安全装備」や「快適装備の数々」も積極的に採用されることになりました。

相変わらず「はたらく車」ではあるのですが、「働く現場に到着するまでの道中の運転は、当然ながら快適に行えるほうが望ましいし、安全にもつながるから」という観点から、各種の先進安全装備が採用されることになったのです。

そんな「はたらく軽自動車」であるスズキ ジムニーはとってもよく売れていて、2021年5月の販売台数は軽四輪車の中の13位。……「13位」というと微妙に思えるかもしれませんが、ジムニーよりも上位にいる軽自動車はすべて、今一番人気の軽スーパーハイトワゴンまたは軽ハイトワゴンです。そんななかに「はたらく軽自動車」が一台混じっているというのは、実はすごいことなのです。

そして現行型のスズキ ジムニーはあまりにも人気が高いため、デビュー当時から「納車は1年待ちが当たり前」みたいな状況だったのですが、その待ち状況は今も、つまり発売から約3年がたった時点でも続いているのです。

究極のタフネスを追求した結果のいさぎよいデザインがウケた

究極のタフネスを追求した結果のいさぎよいデザインがウケた

ではなぜ、現行型スズキ ジムニーはそんなにも売れているのでしょうか?

最大の理由は「デザイン」でしょう。現行型ジムニーは、内外装ともに「ものすごくおしゃれ!!!」ということで大きな話題となり、人々を魅了し、その結果として「長い長い納車待ち」が発生してしまうほどの大人気モデルとなったのです。

ボディのフォルムは近ごろの車に多い「丸っこい感じ」ではなく、スパッと斬り落としたかのようなスクエアフォルムで、かなりイケています。またボディカラーも「キネティックイエロー」や「ミディアムグレー」などのおしゃれな色が多く、とってもいい感じ。そしてインテリアも、使われている部品の表面素材がいちいちおしゃれで、とにかくカッコいいのです。

しかし現行型ジムニーのそういったおしゃれ感は、実はおしゃれを目的としたものではないのです。

あくまでも「過酷な現場で実用的に使えること」だけをとことん追求していったら、結果として「図らずもおしゃれに見えるカタチになってしまった」というのが真相です。

前述した「スクエアフォルムなイカしたボディ」は、格好よくするためでなく「ボディの見切りを良くするため」「(サイドを立てることで)雪が溜まりにくくするため」などの合理的な理由から生まれたフォルムです。

また同じく前述したキネティックイエローやミディアムグレーなどのボディカラーは、「自然の中で目立つように(ハイビジリティカラー)」や、逆に「自然の中でなるべく目立たないように(ロービジリティカラー)」などの理由で採用されたものです。

本職のハンターさんが森と同化するような色のジャケットを着ていたり、山岳地帯で作業をする人が、遭難防止等の観点から視認性の高い色の作業ウェアを着たりするのと、意味としては同じなのです。

さらに、先ほど申し上げた「内装部品の表面がいちいちおしゃれ」というのも、決しておしゃれを狙ったものではありません。狙ったのは「反射を抑える」「ハードな使い方をしてもなるべくキズが付かないようにする」等々のことです。

これらすべての「プロが仕事をするためのスペック」が「逆におしゃれ!」という形で一般ユーザーに受け取られてしまったというのが、事の本質なのです。

「メーターの視認性を高くする」「汚れに強いタフな素材を使う」などしていたら、結果としておしゃれになってしまったジムニーのインテリア。

「本当のプロスペック」だからこそ人々に響いた

そしてスズキ ジムニーという車が大いに売れているもうひとつの理由が――最初の理由とある程度かぶるのですが――「本物である」ということです。

前述したおしゃれ感は、それが「本当にプロのために考えられ、作られたモノ」だからこそカッコよく見え、おしゃれに感じられるのです。これが、本当のプロ仕様ではなく「なんとなくプロっぽく見えるようにしたモノ」であったなら、要するに「なんちゃって」であったなら、ジムニーという車がここまで人の心を引き付けることはなかったでしょう。

洋服などでもそうだと思いますが、おなじアウトドア系のアパレルでも「6000m級の山でも使える性能を持ったウェア」は存在としてカッコいいですし、人々からリスペクトされ、「自分も買いたいな……」なんて思うものです。

でも「カタチだけのなんちゃってアウトドア(風)ウェア」だと、決してそうはなりません。「まぁものすごく安かったら買おうかな?」ぐらいにしか思われないものです。

しかしスズキ ジムニーの場合はすべてが本物で、すべてが「ガチ」であったがために、特に悪路を走ったりはしない大多数のユーザーからも、絶大な支持を得る結果となったのです。

それでいて先進安全装備を搭載する「普通の車」でもある

それでいて先進安全装備を搭載する「普通の車」でもある

そして現行型のジムニーが売れている第3の理由は、「それでいて乗りやすい」ということでしょう。

スズキ ジムニーは、本質的にはプロのためのガチな車です。でも、だからといって普通のユーザーが乗ると運転しづらいということもありません。

中間グレード以上では自動ブレーキや車線逸脱警報、誤発進抑制機能等々は標準装備で、乗り心地も、一般的な乗用タイプの軽自動車と比べればさすがに若干劣りますが、ぜんぜん普通というか、むしろまあまあ良好な乗り心地です。そして「はたらく車」としては、変速機は5MTが便利なのですが、普通に運転する際には好都合である「4速AT」もごく普通にラインナップされています。

要するにジムニーは「6000m級の山でも、そして東京あたりの街なかでも普通に着られる、高機能でおしゃれなウェア」みたいなものです。

現行型のスズキ ジムニーはこのような理由で、つまり「本質に根ざしたデザインと本格的な機能を有し、しかしそれでいて普通に快適にも使える」という理由で大ヒットに至ったわけですが、大ヒットしすぎたおかげで、新車の納期は長くなってしまっています。ディーラーで新車を注文しても、おおむね1年ほどは待たなければならないのが現状なのです。

カーリースだからといって納期が縮まることはありませんが、オリックス自動車は全国のスズキディーラーから情報を取り寄せているため、当初の予定よりも前倒しで納車ができたケースもあります。
ぜひお気軽にご相談いただき、この素晴らしい軽オフローダーを普段使いしていただければと思います。

執筆者
伊達軍曹

外資系消費財メーカー勤務を経て出版業界に転身。自動車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。以来、有名メディア多数で新車および中古車の取材記事を執筆している。愛猫家。
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  • <公開日>2021年8月1日
  • <更新日>2021年8月1日