【販売ランキングチェック!売れているクルマでおすすめはコレ】今が旬!軽自動車SUV編

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近年、軽自動車の世界では「軽スーパーハイトワゴン(非常に背の高い、後部スライドドアを備えた軽自動車)」というモンスター級に使い勝手が良いカテゴリーが大人気となっていますが、それに負けず劣らず人気が高いのが「軽自動車SUV」と呼ばれるカテゴリーです。

軽自動車SUVとは読んで字のごとく、SUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)の雰囲気と機能を、軽自動車に持たせた車のことです。

軽自動車SUVというジャンルを創出したのは、正確には、超本格軽オフローダーであるスズキ ジムニー(1970年~)なのかもしれません。しかしより一般的に考えるのであれば、2014年1月に発売されたスズキ ハスラーこそがこのジャンルを作り、そして人気を決定づけたといえるでしょう。

軽自動車としての扱いやすさと経済性に、トールワゴンとしての実用性を加え、さらにはSUV的なデザインや機能装備によって「アクティブで快活な感じ」も付加した軽SUVは、考えてみれば「ヒットして当然」のカテゴリーだったのでしょう。現在では、カテゴリーのルーツであるスズキ ジムニーとスズキ ハスラーに加えて、ダイハツ タフトや三菱 eKクロスといった軽SUV各モデルがそれぞれ人気を博しています。

今回は2021年1月から6月までの軽自動車累計販売台数ランキングを眺めつつ、「今イチ推しの軽SUV」について検討してみます。

スズキ ハスラーとダイハツ タフトが覇権を争い、スズキ ジムニーが独自路線を行くという構図

まずは「軽自動車全体」の、2021年1~6月の軽乗用車累計販売台数ランキング ベスト15を見てみましょう。

1位 ホンダ N-BOX|11万551台(スーパーハイト)
2位 スズキ スペーシア|7万8698台(スーパーハイト)
3位 ダイハツ タント|6万9262台(スーパーハイト)
4位 ダイハツ ムーヴ|5万7761台(ハイト)
5位 日産 ルークス|5万55台(スーパーハイト)
6位 スズキ ハスラー|4万8221台(SUV)
7位 スズキ アルト|3万6359台(ハッチバック)
8位 ダイハツ ミラ|3万6159台(ハッチバック)
9位 ダイハツ タフト|3万2191台(SUV)
10位 日産 デイズ|3万1558台(ハイト)
11位 スズキ ワゴンR|3万236台(ハイト)
12位 ホンダ N-WGN|2万7695台(ハイト)
13位 スズキ ジムニー|2万2127台(SUV)
14位 三菱 eK|1万9139台(SUV/スーパーハイト/ハイト)
15位 ホンダ N-ONE|1万3969台(ハッチバック)

上記のカッコ内は、その車が属するカテゴリーを表しています。やはりなんだかんだで一番売れているのはホンダ N-BOXなどのスーパーハイトワゴンですが、軽自動車SUVは3番手ぐらいのニュアンスで確実に売れており、特に、カテゴリーの第一人者であるスズキ ハスラーに限って言えば「スーパーハイトワゴンの次ぐらいに売れている」と評していいでしょう。

ちなみに三菱eKのところが「(SUV/スーパーハイト/ハイト)」となっているのは、eKブランドの発表数字は軽SUVである「eKクロス」と、軽スーパーハイトワゴンである「eKクロススペース」等々の合算となっているからです。

上記ベスト15のランキングから「軽自動車SUV」だけを抜粋すると、下記のとおりとなります。

1位 スズキ ハスラー|4万8221台
2位 ダイハツ タフト|3万2191台
3位 スズキ ジムニー|2万2127台
4位 三菱 eKクロス|1万9139台(※eKクロススペースなどの台数を含む)

しかしこの順位が、そのまま「おすすめ順」といえるかどうかは微妙なところです。なぜならば、ひと言で「軽自動車SUV」といっても各車の個性は微妙に、あるいは大幅に異なっているため、何をもって「いい車」とするかは一概にはいえないからです。

そのため、ここは「おすすめ順」というよりも「それぞれの個性を紹介する」というニュアンスで、軽SUVのランキングをたどっていきたいと思います。

1位 スズキ ハスラー(132万4400円~179万800円)/すべてにおいて死角なしの「ディフェンディングチャンピオン」

1位 スズキ ハスラー(132万4400円~179万800円)/すべてにおいて死角なしの「ディフェンディングチャンピオン」

ジャンルを作った立役者は、よりギアっぽくなった2代目モデルも絶好調

スズキ ハスラーは、2014年1月に登場した初代モデルが「軽自動車SUV」という新たなジャンルを切り開き、現在は、2019年12月に発売となった2代目が新車として販売されています。

2代目のハスラーは、「遊べる軽」というコンセプトはそのままに、デザインとパッケージ、走り、安全装備などが全方位的にレベルアップされています。

エクステリアデザインは、より機能性を感じさせる「タフで力強いカタチ」に一新することで、よりいっそうSUV風味を強化。インテリアも、アウトドアウオッチなどを意識した新しいデザインとなっています。

新しい車台により車内の広さと走りが同時に向上

新世代プラットフォームの採用とボディ形状の変化に伴い、従来モデルより全高を15mm、ホイールベースを35mm拡大。これにより車内の前後席間距離は35mm広がり、肩まわりや頭上スペースなども拡大され、従来モデル以上にゆとりを感じられる空間となっています。

車台は「ハーテクト」と呼ばれる新世代のプラットフォームで、さらに加えて高剛性なボディ構造や構造用接着剤等々のスズキ初、軽自動車初の技術も積極的に取り入れることで、優れた操縦安定性と快適な乗り心地、音や振動を抑えた車内環境が実現されているのも2代目ハスラーの特徴です。

自然吸気エンジンは熱効率を改善した「R06D」という新開発のもので、全車にマイルドハイブリッド機構が採用されています。

運転支援システムにも抜かりはなし

運転支援システムは、夜間の歩行者検知機能、一時停止や進入禁止などの道路標識を認識する標識認識機能、後退時ブレーキサポート機能などを備えた「デュアルカメラブレーキサポート」を採用。さらにターボ車には、スズキの軽としては初となる全車速追従型アダプティブクルーズコントロール(ACC)や、車線逸脱抑制制御機能も装備されています。

さすがは「遊べる軽」、後席&荷室の使い勝手も良好!

2代目のスズキ ハスラーは、後席および荷室の使い勝手においても秀逸です。

ハスラーの後席はスライド機構を持っているため、後端まで移動させれば、身長が高い大人4名でもゆったり乗車することができます。またハスラーの後席はリクライニング機構も付いていて、自分に合った着座姿勢への調整を簡単に行えます。

またハスラーの荷室には、簡単に取り外せる防汚タイプのラゲッジアンダーボックスが装備されていたり、背もたれの裏側にあるストラップを引けば、荷室側からでもスライドによる位置調整が可能であるなど、非常に使い勝手の良いものとなっています。

このような実用機能面において優れていて、なおかつ前述してきたとおり走行性能や安全装備のクオリティも高く、さらにはデザイン的にもイカしてる――ということで、2代目のスズキ ハスラーはほぼ死角のない、カテゴリーNo.1の販売台数をキープしているのも当然な軽自動車SUVだと言えるでしょう。

2位 ダイハツ タフト(135万3000円~179万8500円)/全車標準装備の「スカイフィールトップ」でハスラーを追撃

2位 ダイハツ タフト(135万3000円~179万8500円)/全車標準装備の「スカイフィールトップ」でハスラーを追撃

デザイン上の「存在感」はハスラー以上かも?

ダイハツ タフトは、スズキ ハスラーのライバル車種として2020年6月に発売となったダイハツの軽自動車SUVです。

いかにもSUV然とした直線基調のスタイリングは、ある意味ハスラー以上に個性的で、大径タイヤや、車体下部と前後フェンダーに施されたモールディングなどによって「頼もしさ」を表現。車高はハスラーより50mm低いものの、最低地上高は190mmと、軽規格のSUVとしては十分な高さが確保されています。

青空満喫の「スカイフィールトップ」を全車に標準装備

タフトの最大の特徴は、全グレードに標準装備される「スカイフィールトップ」でしょうか。これはスーパーUV&IRカット機能付きの大型ガラスルーフで、このほかにも、床面の高さを2段階で調整できるデッキボードや、そのデッキボードを上段に設定すればフラットで床広い積載スペースが得られるなど、SUVとしてのさまざまな工夫が盛り込まれています。

後席のスライド&リクライニング機能がないのは残念だが、そこ以外は問題なし

予防安全・運転支援システムの「スマートアシスト」も改良型が採用されていて、約3年半ぶりにステレオカメラを刷新したことで検知性能が向上し、夜間歩行者への対応も可能になっています。また衝突回避支援ブレーキの対応速度が引き上げられ、予防安全機能の数は全17種類に。

アダプティブクルーズコントロール(ACC)は、ダイハツ初となる電動パーキングブレーキを採用したことで、停車中の持続的なホールドを実現しています。このACCはターボ車に標準装備されるほか、自然吸気モデルの上級グレードにもオプションで装着可能です。

スズキ ハスラーと比べると「後席のスライドやリクライニングができない」という欠点があるにはあるのですが、それ以外はハスラーに決して負けていない、かなり実用的でありながらもしゃれたデザインの軽SUVだといえるでしょう。

3位 スズキ ジムニー(148万5000円~187万5500円)/一般ユーザーにも大人気となった「はたらく車」

3位 スズキ ジムニー(148万5000円~187万5500円)/一般ユーザーにも大人気となった「はたらく車」

プロスペックな性能とデザインが大ヒットの要因

その初代は1970年に登場した、軽SUVというよりは「超本格派の軽オフローダー」。主には山岳地帯や豪雪地帯などで働く人が使うための車として開発され、悪路での機動力が抜群なことから、林道や雪道などをレジャーのために走る人向けの車としても愛用されてきたのがジムニーという車です。

2018年7月に発売された現行型、4代目のスズキ ジムニーも「はたらく車」としての本質は歴代モデルと同一で、そのために開発された車でもあります。

しかし現行型のジムニーは、極限の実用性を追求した結果としての「四角四面なボディデザイン」や「ヘビーデューティなインテリア素材」などが、悪路は特に走らない一般ユーザーにも「カッコいい!」ということで大評判となり、いきなり大人気を博すことになりました。デビュー直後は、新車を注文しても「1年待ちは当たり前」という状況だったのですが、その待ち状況は今なお続いています。

舗装路もまあまあ快適に走れるが、本来は悪路向けの構造

搭載エンジンは最高出力64psの直3ターボで、駆動方式は悪路走行に適したパートタイム4WD。車台も、乗用車で一般的なモノコック構造というものではなく、オフロード走行に適している「ラダーフレーム構造」というものを採用しています。

それゆえスズキ ジムニーの舗装路における乗り心地は決して快適ではありません。しかし不快というほどではありませんし、5MTのほかに4速ATも用意されていて、最上級グレードである「XC」には予防安全装備「スズキ セーフティ サポート」を標準装備。またそれ以外のグレードでも、オプションとしてスズキ セーフティ サポートを装着することは可能です。

そのため特に悪路を走る予定がない人も、スズキ ジムニーを「スタイル優先」で選ぶのは大いにアリでしょう。

ただ、一般的な軽乗用車ベースの軽SUVと比べれば舗装路での乗り心地はやや劣るということと、新車の納期はいまだかなり長いということだけは、あらかじめ承知しておく必要はあります。

4位 三菱 eKクロス(146万3000円~182万500円)/実物の顔は意外とカワイイ(?)軽SUVの秀作

4位 三菱 eKクロス(146万3000円~182万500円)/実物の顔は意外とカワイイ(?)軽SUVの秀作

日産と三菱の合弁で生まれた新世代軽SUV

軽SUVであるeKクロスだけでなく、軽ハイトワゴンの「eKワゴン」や、軽スーパーハイトワゴンである「eKスペース」「eKスペースクロス」との合算で2021年1~5月の販売台数が1万9139台ということですので、販売台数的には他の軽SUVから若干水を開けられている状態の三菱 eKクロスではあります。

しかしこの車、なかなかよくできた軽SUVです。

三菱 eKクロスは、日産と三菱自動車の合弁会社「NMKV」が企画した軽自動車で、日産 デイズとは姉妹車の関係になります。現行型では企画と開発を日産が行い、生産を三菱が担当しました。

eKクロスが採用する車台は、それまでのeKワゴンが採用していたものから完全に刷新され、まったくの新世代プラットフォームに。

搭載エンジンは最高出力52psの直3自然吸気が基本ですが、同64psを発生するパワフルなターボエンジンも用意されています。また、2kWの電気モーターとリチウムイオン電池を組み合わせたマイルドハイブリッドシステムを採用し、燃費向上と加速時のモーターアシストが実現されているというのも三菱 eKワゴンの特徴となります。

基本的な運転支援システムは全車標準装備

運転支援システムも充実しており、衝突被害軽減ブレーキや踏み間違い衝突防止アシスト、車線逸脱警報&車線逸脱防止支援機能、オートマチックハイビームからなる「e-Assist」は全車に標準装着(※一部グレードではレスオプションの選択も可能)。さらにオプションとして、デジタルルームミラーやアダプティブクルーズコントロールと車線維持支援機能を組み合わせた「MI-PILOT」も用意されています。

個性的なフロントマスクが気に入ったなら「買い」で

以上のとおりのスペックを持つ三菱 eKクロスは、新世代のプラットフォームとエンジンがかなりいい感じですので、とにかく気持ちよく、安全かつ快適に走らせることができる軽SUVです。

しかしそれ以上に、この車の最大のポイントは「顔」なのかもしれません。

三菱 デリカD:5にも通じるイメージの大胆なフロントマスクは、写真だけを見ると「うっ……」と思う人もいるかもしれません。しかし実物は意外とカワイイというか、車全体のカタマリ感と絶妙にマッチしていて、「けっこう好印象!」と思う人も多いはず。

この顔に、良くも悪くもピンときたならば、一度はチェックしてみるべき軽SUVだといえるでしょう!

執筆者
伊達軍曹

外資系消費財メーカー勤務を経て出版業界に転身。自動車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。以来、有名メディア多数で新車および中古車の取材記事を執筆している。愛猫家。
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  • <公開日>2021年8月1日
  • <更新日>2021年8月1日