近ごろ、軽ハイトワゴンや軽スーパーハイトワゴンは大人気ジャンルのひとつとなっていますが、そのなかでも特に好調なのが「カスタム」と一般的に呼ばれている製品ラインです。
軽自動車カスタムは、プレーンでシンプルなデザインである場合が多い標準モデルに対し、クールでワイルドなニュアンスのフロントマスクやホイール、エアロパーツなどを採用することで「押し出し感」を強調し、同時にインテリアも標準車以上にクール&ワイルドなニュアンスに仕立てたモデルです。
そういった全体的なムードに対して「押し出し感があってイイ!」あるいは「クールだ!」と感じる人が多いことから、軽自動車カスタムは大人気のジャンルとなっているのです。
またそういったイメージ(デザイン)の面だけでなく、軽自動車カスタムの各グレードは「標準モデルよりも上級」と位置づけられているため装備のレベルが高く、満足感を得やすい――というのも、軽自動車カスタムが人気を集めている理由です。
今回は2021年8月の軽自動車販売台数ランキングを眺めつつ、「今イチ推しの軽自動車カスタム」について検討してみます。
今や大半の軽自動車に「カスタム」が設定されている
まずは「軽自動車全体」の、2021年8月度の軽乗用車販売台数ランキング ベスト15を見てみましょう。
1位 ホンダ N-BOX|1万3229台
2位 スズキ スペーシア|9300台
3位 ダイハツ タント|8214台
4位 スズキ ハスラー|7246台
5位 ダイハツ ムーヴ|6897台
6位 スズキ ワゴンR|6235台
7位 ダイハツ タフト|4887台
8位 日産 ルークス|4739台
9位 ダイハツ ミラ|4514台
10位 スズキ アルト|3417台
11位 ホンダ N-WGN|3391台
12位 日産 デイズ|2594台
13位 三菱 eK|2262台
14位 スズキ ジムニー|1812台
15位 トヨタ ピクシス|1758台
赤く記した車種は、標準モデルのほかに「カスタム」をラインナップしているモデル。……15車種のうち、実に9車種に「カスタム」が設定されているということです。
カスタムが設定されていないのはスズキ ハスラーなどの軽自動車SUVと、ダイハツ ミラなどのおとなしいハッチバック系だけ。それ以外の売れ筋ジャンルのほぼすべてに「カスタム」が用意されていて、そしてそれがよく売れている――というのが軽自動車の現状なのです。
それでは以降、基本的には販売台数ランキング順に、おすすめの軽自動車カスタムを個別に見てまいりましょう。
1位 ホンダ N-BOXカスタム(187万9900円~215万2700円)/日本で一番売れてる軽自動車の、そのなかでも一番売れてるのがコレ!
「流れるウインカー」などのキラキラ系装備が充実
軽自動車販売台数No.1であるホンダ N-BOXに用意されているカスタムが、その名も「N-BOXカスタム」。やや古いデータにはなりますが、2020年1~2月の販売比率は標準モデルが42%でカスタムが58%。圧倒的というほどの差ではありませんが、「N-BOXはカスタムのほうが確実によく売れる」と言うことはできるでしょう。
標準モデルのN-BOXより上級のグレードと位置づけられているN-BOXカスタムは、押し出し感の強いフロントグリルがまず最大の特徴で、それに加えてマルチリフレクタータイプのフルLEDヘッドライトや内側から外側へと点灯するシーケンシャルウインカー、インテリアイルミネーションなどのキラキラ系装備各種が採用されています。さらにテールゲートスポイラーも装着されるため、標準モデルと比べるとぐっとスポーティな印象があります。
標準モデルよりは若干お高い価格設定ではありますが、「キラキラした押し出し感」がお好きな人であれば、価格差分の満足感は確実に感じられることでしょう。
2位 スズキ スペーシア カスタム(164万8900円~195万9100円)/フロントグリルの押し出し感はコレが軽自動車No.1か?
標準モデルでは選べないターボも、カスタムなら選択可能
王者N-BOXに次ぐ勢いで売れているスズキ スペーシアに用意されているカスタムモデルが「スペーシア カスタム」です。
ボディ全体の基本デザインは標準モデルと共有していますが、押し出し感の強い専用フロントマスクと専用エアロをまとうことで、標準モデルとはずいぶん違うタフなイメージに仕上がっています。
黒を基調とするインテリアはメッキ加飾とのコントラストによって上質さが強調され、上級グレードである「HYBRID XS」「HYBRID XSターボ」には本革を使用したシフトノブやステアリング、ホールド性を高めたレザー調の表皮の専用シートなどが採用されています。
またスペーシア カスタムの場合、標準モデルではターボ付きエンジンを選択できないのですが、カスタムであればパワフルなターボ付きエンジン搭載車も選べるという点も、場合によっては「カスタムを選ぶべき理由」になるでしょう。
3位 ダイハツ タント カスタム(172万1500円~200万2000円)/押し出し感をやや控えめとすることで「上質」を目指した軽自動車カスタム
「ほどほどのアグレッシブ感」を求める人に
「子育て世代のための、ほんわかしたイメージの軽スーパーハイトワゴン」というイメージが強いダイハツ タントですが、そんなタントにも「タント カスタム」はラインナップされています。
タント標準モデルのコンセプトが「気取らない頼もしさと楽しさを表現した“すっぴん美人”スタイル」であるのに対し、タントカスタムは「大人の感性に響く“洗練/上質”スタイル」。
このコンセプトに基づいてヘッドランプの形状やフロントマスク全体を変更し、エアロパーツも装着しているわけですが、「大人の感性に響く洗練、上質」をテーマとしたからでしょうか、ホンダ N-BOXやスズキ スペーシアのカスタムが「ザ・押し出し感!」といったニュアンスであるのに対し、タントカスタムはややおとなしめです。
インテリアの基本デザインは標準モデルと同一ですが、グレーを基調とする標準モデルと違って黒を基調とすることで、ハードなイメージに。またシート表皮も標準モデルはすべてファブリックですが、「カスタムX」と「カスタムRS」はファブリック+ソフトレザーのコンビネーションを採用しています。
「車体左側面の中央にピラー(柱)がないミラクルウォークスルーパッケージは魅力だが、標準のタントよりはもうちょっとクールなイメージな車に乗りたい……」と考える場合は、ダイハツ タント カスタムはちょうどいい選択肢となるでしょう。
11位 ホンダ N-WGN カスタム(154万円~182万7100円)/押し出し感ではなく「クールさ」で勝負する唯一の軽自動車カスタム
「強烈な押し出し感はちょっと苦手……」という人にぜひ
販売台数ランキングの5位と6位、8位にはダイハツ ムーヴとスズキ ワゴンR、日産 ルークスが入っているのですが、それらのカスタムモデルは割愛して(※ちなみにワゴンRのカスタムは「スティングレー」、ルークスのカスタムは「ハイウェイスター」という名称になります)、11位の軽ハイトワゴン「ホンダ N-WGN」をご紹介します。
軽自動車カスタムというのは「上質でクールで、そして押し出し感があって」という世界観を追求しているジャンルですが、
現行型ホンダ N-WGNのカスタムモデルであるN-WGNカスタムは、まさに「クール」という概念が見事に表現されたデザインをまとっています。
軽自動車カスタムを作る際のデザイン手法は、とにかくフロントグリルを大きくして、ヘッドランプをツリ目にして、さらにメッキパーツもたくさん使って――というのが常套手段なのですが、N-WGNカスタムは違います。
派手さを求めるのではなく、スクエアなフルLED式ヘッドランプやシーケンシャル式ウインカーなどの形状や配列を吟味することで、シックで未来的な、そして上質なイメージを表現しているのです。
「標準モデルの軽自動車では物足りないけど、かといって押し出し感バリバリの軽自動車カスタムはちょっと苦手かも……」的に考えている人は、決して超売れ筋モデルではないのですが、ホンダ N-WGNカスタムにぜひご注目いただければと思います。
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執筆者
伊達軍曹 - 外資系消費財メーカー勤務を経て出版業界に転身。自動車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。以来、有名メディア多数で新車および中古車の取材記事を執筆している。愛猫家。
- <公開日>2021年10月8日
- <更新日>2021年10月8日