このところ、ダイハツ ムーヴ キャンバスの売れ行きが伸びている。
ムーヴ キャンバスは、4枚ヒンジドアタイプのムーヴをベースに、ファミリー層に絶大な支持がある後席両側スライドドアを装備したモデル。ワーゲンバス(正式にはフォルクスワーゲン タイプ2)を思わせるレトロデザインの軽ハイトワゴンだ。
「自身のライフスタイルを楽しむ女性に寄り添う新感覚スタイルワゴン」をテーマに、2016年9月に発売されたダイハツ ムーヴ キャンバス。
デザインだけじゃなく走りもホンワカと気持ちいい
ベースとなった先代のダイハツ タントは、乗り心地がハードなのが欠点だった。タントくらい背が高いと、横転を防ぐために足回りをある程度固めないと危険という、当時のダイハツの設計思想によるものだ。しかし先代タントより10cm車高の低いムーヴ キャンバスは、その分足回りをソフトに仕上げてある。
エンジンは、低速トルクに定評のあるダイハツ製だけに、ノンターボエンジンでも日常走行は必要にして十分。車体は意外と重いので、きつい上り坂ではパワー不足を感じるが、遮音が上手で耳障りな音があまりしないため、「遅い!≒ウルサイ!」をそれほど感じない。日常的な走行シーンなら、すべてがホンワカと気持ちいい。
最大の美点は、なんといってもそのルックスだ。ムーヴ キャンバスは女性を意識したカワイイ系のデザインだが、同時にワーゲンバスという究極の実用車をモチーフにしている。単なるカワイイ系デザインではない、普遍的な魅力を持っているのだ。
「浜辺にたたずむ子犬」を見たときのような胸キュン感がある?
センターメーターを中心に、シンプルだがセンスよくまとめられているムーヴ キャンバスの運転席まわり。
ライバル「スズキ ワゴンR スマイル」も発売されたが
このところダイハツ ムーブ キャンバスは、本家のムーヴを差し置いて、それを上回る売れ行きを見せている。今年6月の販売台数は5417台。王者N-BOXの1万7479台とは比べるべくもないが、ムーヴの3206台を上回っている。前年同月比はなんと230%!登場からすでに5年を経たモデルが、静かなブームを起こしていると言っても過言ではない。
登場から5年を経たモデルが販売を伸ばしているのだから、このクルマには普遍的な魅力があるとしか言いようがないではないか。
その動向をライバル社が見逃すはずはなく、先般スズキは、ムーヴ キャンバスに真正面からぶつけた新型車「ワゴンRスマイル」を発売した。背はムーヴ キャンバスより4cmほど高く、スーパーハイトワゴンにかなり近いが、見た目は超ガチンコ。ほのかにカワイイ系な、後席両側スライドドア車である。
こちらが、キャラクターやサイズがダイハツ ムーヴ キャンバスと大いにカブるスズキ ワゴンRスマイル。
ダイハツ ムーヴ キャンバスとスズキ ワゴンRスマイルのどちらが魅力的かと問われれば、それは大変微妙だ。
スズキの軽のほうが全般に軽量だし、最廉価グレードを除けば低速域での加速を助けるマイルドハイブリッドも装備されている。つまりダイハツのムーヴキャンバスより、スズキのワゴンRスマイルのほうが、加速も燃費も若干優れているはずだが、細かい性能にこだわらないのであれば、見た目の印象で好きなほうが選べばよいだろう。
こちらはダイハツ ムーヴ キャンバス。両側スライドドアは全車標準装備。
次期型も気になるが、デザインは「今のキャンバス」がいいはず!
気になるのは、来年登場すると噂される次期型ムーヴ キャンバスだ。ダイハツは現行型のタントから「DNGA」と呼ばれる新型プラットフォームを導入していて、走りの質感が大幅に向上している。背の高いスーパーハイトワゴンのタントでも、カーマニアも納得の、しっかりした低重心の走りが味わえる。
つまり現行タントをベースにした新型のムーヴ キャンバスが登場すれば、走りの質感は「ほわ~ん」から「きりっとジェントル」に昇格しているだろう。
ただデザインに関しては、現在のムーヴ キャンバス以上に魅力的にするのは至難の業かもしれない。現行のムーヴ キャンバスに一目ぼれした方は、迷わず入手してしまっていいと思います!
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執筆者
MJブロンディ(清水草一) - 1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。代表作『そのフェラーリください!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高はなぜ渋滞するのか!?』などの著作で道路交通ジャーナリストとして活動。
- <公開日>2021年10月8日
- <更新日>2021年10月8日