日本を代表する実用車ブランドであるトヨタ カローラシリーズに、「カローラ クロス」というSUVが追加されました。
ここでは、今いちばんアツいコンパクトSUVの世界に「王者候補」として堂々たる殴り込みをかけたトヨタ カローラ クロスの概要と特徴を、なるべくわかりやすくご紹介いたします。
サイズはミドルクラスに近いが、価格はコンパクトSUV的
カローラ クロスは、50年以上の歴史を持つカローラシリーズでは初のSUVタイプ。開発コンセプトは「新空間 新感覚 COROLLA」で、「SUVならではの広い室内空間や高いユーティリティに加え、力強い走りと低燃費を両立させた」とうたわれています。
ボディサイズは全長4490mm×全幅1825mm×全高1620mmと、カローラシリーズのなかでは唯一の全幅1800mmオーバー。コンパクトSUVというよりはミドルクラスのSUVに近いサイズですが、それでいて価格は日産 キックスやホンダ ヴェゼルなどのコンパクトSUVに近いというのが、カローラ クロスの第一の特徴です。
パワーユニットは、最高出力140psの1.8L直4ガソリンエンジンと、1.8Lエンジンをベースとするハイブリッドの2種類。ハイブリッド車の1.8Lエンジンは最高出力98psですが、同72psのフロントモーターが走りをしっかりアシストします。
またガソリンエンジン車はFFのみですが、ハイブリッドには7.2psの独立式リアモーターで後輪を駆動させる4WD車も設定されています。WLTCモード燃費はガソリン車が14.4km/Lで、ハイブリッド車は26.2km/Lです。
運転支援システムは「Toyota Safety Sense」を全車に標準装備。新型アクアと違って交差点での対向直進車の検知等には対応していませんが、自転車(昼間)や歩行者(昼夜)も検知可能なプリクラッシュセーフティとオートマチックハイビーム、ロードサインアシストなどは普通に備わっています。またパーキングサポートブレーキとバックガイドモニターも、最廉価グレード以外は装着されています。
トヨタ カローラ クロスの運転席まわりと室内。写真はいずれも最上級グレードの「Z」。Z以外のシート表皮はファブリックになります。
車幅は1.8m超だが市街地での取り回しも意外とラク
トヨタ カローラ クロスは、実際に走らせてみても「いい感じ」です。
全幅1825mmとけっこう幅広な車ではありますが、水平基調のフォルムであるため前後左右の見切りが良く、最小回転半径5.2mと小回りも利くため、市街地でも「車幅が広くて運転しづらい」と感じることはほとんどありません。
1.8Lのガソリンエンジンは実用回転域(普段よく使う低~中回転域)での力強さがあるため扱いやすく、車幅がそれなりにあるせいか、高速での直進性やコーナリング時の安定性もなかなか良好です。
そして乗り心地も、低速域では若干硬めに感じられますが、不快な突き上げ感などはありません。あくまでも「300万円以下の手頃なSUV」という範囲内で物事を考えるなら、走行性能と乗り心地は「非常に良好」と評していいでしょう。
98psの1.8Lエンジンと72psのフロントモーターを組み合わせたハイブリッド車のほうは、「圧倒的にパワフル」というほどではありませんが、人や荷物を満載してもグイグイ走れるぐらいにパワフルではあります。それでいて20km/L以上の実燃費は普通に期待できる省燃費性能を有していますので、ガソリン車より少々お高いのですが、選ぶ意味は十分あります。
中間グレード以上でも車両価格はかなりお手頃
そんなトヨタ カローラ クロスのグレード構成とそれぞれの価格は下記のとおりです。
【ガソリン車】
G“X”(FF)|199万9000円
G(FF)|224万円
S(FF)|240万円
Z(FF)|264万円
【ハイブリッド車】
G(FF)|259万円
G(4WD)|279万9000円
S(FF)|275万円
S(4WD)|295万9000円
Z(FF)|299万円
Z(4WD)|319万9000円
ガソリン車の最廉価グレード「G”X”」でも必要十分な装備は標準で付いていますが、プッシュボタンスタートでないなど、使い勝手が劣る面は正直あります。
ひとつ上の「G」はヒーター付ドアミラーやプライバシーガラス、パーキングブレーキサポート、バックモニター、革巻きステアリング&シフトノブなどが装備され、安全性と上質感は1段階以上アップします。
そして「S」には17インチアルミホイールやルーフレール、金属塗装されたグリル、ワイパーのスピード調整機能などが採用され、細かい部分がより上質になっています。
最上級グレードの「Z」は18インチアルミホイールとシーケンシャルウインカー&LEDポジションランプ&デイライト、LEDフォグランプ、発光テールランプ、革とファブリックのコンビシート(運転席パワーシート&左右シートヒーター付き)、パワーバックドアなど、いわゆる「全部盛り」の状態になっています。
写真は豪華装備が「全部盛り」となる最上級グレードのZ。
基本的には「G」でも装備レベルは普通に十分であり、最上級グレードの「Z」はGと比べて40万円も高いため、Zが魅力的なことは理解しつつも、「総額」でみると「G」のお買い得感が光ります。
しかしカーリースまたはオートローンでの「毎月支払額」で考えた場合の差額はさほど大きくはありません。その意味で、上級グレードの「S」または最上級グレードの「Z」を一度検討してみるのも悪くない選択でしょう。
いずれにせよトヨタ カローラ クロスは、そのビジュアルも走りも使い勝手も、いかにも最近のトヨタらしい「平均点が非常に高い車」です。選んで間違いのない実用ファミリーカーですので、ご興味のある方はより突っ込んで、そのリース額などを詳細にチェックしてみてください。
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執筆者
伊達軍曹 - 外資系消費財メーカー勤務を経て出版業界に転身。自動車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。以来、有名メディア多数で新車および中古車の取材記事を執筆している。愛猫家。
- <公開日>2022年1月4日
- <更新日>2022年1月4日