ミドルサイズSUVほど便利なものはないというか、何かと都合のいい乗り物はないような気がします。
SUVならではの特性として悪路と舗装路の両方を快適に走れますし、アウトドアに似合うのは当然として、「ちょっとした高級ホテルに行く」なんてシーンにもよく似合います。さらに、ミドルサイズゆえに「大きすぎて邪魔になる(あるいは燃費が悪い)」ということはほとんどありませんし、逆に「小さすぎて人も荷物も載らない……」みたいなこともありません。
そんなミドルサイズSUVのなかでも今特に注目したいのは、2021年8月に大幅改良を行った「スバル フォレスター」と、フォレスターより少し遅れて同年12月に同じく大幅改良が行われた「マツダ CX-5」でしょう。
どちらもそれぞれナイスなSUVであり、どちらもそれなりによく売れています。ただ、この2台はカブる部分もなくはないため、「……自分にはどちらが向いているのだろうか?」と迷ってしまうこともあるかもしれません。
もしも迷った場合は、どちらをどう選べばいいのでしょうか? さまざまな観点から、両者を比較してみることにしましょう。
【ラウンド1:どっちが売れている?】マイナーチェンジ前の販売台数はおおむね互角
まずは「今、実際どちらが売れているのか?」というデータを見てみます。
日本自動車販売協会連合会が発表した直近のデータによれば、スバル フォレスターとマツダ CX-5の販売台数は下記のとおりとなっています。
●2021年11月単月
スバル フォレスター|3975台
マツダ CX-5|統計に出てこないTOP50圏外のため不明
昨年11月の販売台数は「総合14位と健闘したスバル フォレスターに対し、ランキング圏外で低迷したマツダ CX-5」という図式に見えるわけですが、この見せ方には若干の、いや大きな問題があります。
なぜならば2021年11月は、同年8月に大幅改良を受けたスバル フォレスターがちょうど納車されはじめたタイミングであるのに対し、マツダ CX-5は翌月に大幅改良を控えているという、普通に考えて「売れるはずがないタイミング」だからです。
ということで計測期間を変えて両者の販売台数を見てみると、以下のとおりとなります。
●2021年上半期(1~6月)
スバル フォレスター|1万1692台(総合29位)
マツダ CX-5|1万2460台(総合27位)
●2021年度上半期(4~9月)
スバル フォレスター|7506台(総合31位)
マツダ CX-5|7232台(総合32位)
2021年12月に大幅改良を受けたマツダ CX-5の納車が本格化してからの数字がどうなるかはわかりませんが、両者のマイナーチェンジ前の販売台数は「おおむね互角である」というのが答えとなりそうです。
こちらがスバル フェレスターのリアビュー。写真のグレードは「Advance」。
こちらはマツダ CX-5。写真は特別仕様車の「20S Field Journey」。
【ラウンド2:どっちの使い勝手が良い?】荷室はCX-5がほんの少々優勢だが、全体として見ればほぼ同等か
お次はボディサイズや車内の広さ、使い勝手などを比較してみましょう。まず、両者のボディサイズは下記のとおりです
●スバル フォレスター|全長4640mm×全幅1815mm×全高1715mm(※X-BREAKは1730mm)
●マツダ CX-5|全長4575mm×全幅1845mm×全高1690mm
車体寸法は「だいたい同じぐらい」といえますが、強いていうと「CX-5のほうがワイド&ローなフォルムである=一般的にカッコいいとされるフォルムである」という評価にもなるかもしれません。
ちょっとした段差などもあまり気にせずガンガン走りたいSUVですので、「最低地上高」も比較してみましょう。
●スバル フォレスター|220mm
●マツダ CX-5|210mm
フォレスターのほうが若干「上」ですが、まぁこれは「両者とも十分な最低地上高を有している」と見るのが正解です。
お次、室内寸法はどうでしょうか?
●スバル フォレスター|室内長2140mm×室内幅1545mm×室内高1275mm
●マツダ CX-5|室内長1890mm×室内幅1540mm×室内高1265mm
こうして数字だけを見ると、特に室内長は大きな差があるようにも感じられますが、実際は「大差ない」といったニュアンスです。スバル フォレスターのほうが無骨なボディフォルムである分だけ、スタイリッシュなCX-5よりも若干長くて高いというのはありますが。
スバル フォレスター大幅改良モデルの運転席まわり。
こちらはマツダ CX-5大幅改良後モデルの運転席まわり。
SUVの場合は特に気になる「荷室のサイズ」はどうでしょうか?
●スバル フォレスター|荷室開口部最大幅1300mm×荷室高884mm
●マツダ CX-5|荷室幅1450mm×荷室高750~790mm×荷室長950mm
両メーカーで採寸している箇所が異なるため直接の比較はしにくいのですが、荷室の横幅はマツダ CX-5がやや優勢です。スバル フォレスターはホイールハウスの出っ張りがやや気になるかもしれません。
こちらはスバル フォレスター。車高が高い分だけ、荷室高はマツダ CX-5より10~13cmほど高い作りになっている。
こちらはマツダ CX-5のラゲッジスペース。荷室高はスバル フォレスターより劣るが、荷室の幅はこちらのほうが15cmほど広い。
【ラウンド3:走行性能と燃費は?】四駆の性能はフォレスターが優勢だが、都市部ではFFもあるCX-5が有利か
お次は「走行性能」です。
用意されるパワーユニットは、スバル フォレスターは2L水平対向4気筒エンジン(最高出力145ps)を電気モーター(同13.6ps)がアシストする「e-BOXER」と、最高出力177psとなる1.8L水平対向4気筒ターボエンジンの2本立て。トランスミッションはいずれもCVT(無断変速機)です。
それに対してマツダ CX-5は、2Lおよび2.5Lの直列4気筒ガソリンエンジンと、2.2L直列4気筒ディーゼルターボエンジンの3種類がラインナップされています。こちらのトランスミッションは6速ATが基本ですが、ディーゼルターボエンジン搭載車では6MTを選ぶこともできます。
駆動方式は、スバル フォレスターは全車フルタイム4WDですが、マツダ CX-5は3種類のパワーユニットそれぞれに4WDとFFの両方が用意されています。
全車フルタイム4WDとなるスバル フォレスター。
マツダ CX-5は4WDとFFの双方をラインナップ。
両者の走行性能は「甲乙付け難し!」といったところで、どちらも素晴らしくよく走るSUVです。フォレスターは「スバルグローバルプラットフォーム」という抜群に高剛性な車台がいい仕事をしていますし、2021年8月のマイナーチェンジで「e-アクティブシフトコントロール」というアダプティブ変速制御をe-BOXER搭載車に採用するとともに、サスペンションのセッティングも最適化されました。
そしてマツダ CX-5も2021年12月の大幅改良で、外観デザインを変えただけでなく走りの部分にもマニアックな改良を施したため、もともと良好だった走りはさらに良くなっています。
そのため、このラウンド3は「引き分け」とするのが妥当な判断かと思いますが、強いていうのであれば、SUVに「本格的な四駆性能」を求めたいのであればスバル フォレスターが、「主に都市部での軽快でスタイリッシュな走り」を求めたいのであればFFのマツダ CX-5が、それぞれ優勢ということになるでしょう。
なおWLTCモード燃費はスバル フォレスターが13.6~14.0km/Lで、マツダ CX-5はガソリン車が13.0~14.6km/L、ディーゼルターボ車は16.6~19.5km/Lです。ガソリン車はおおむね同等といったところですが、ディーゼルターボを搭載するCX-5の燃費はさすがにまずまず優秀です。
【ラウンド4:どっちが安全?】先進安全装備は両者とも充実しており、直近のマイナーチェンジでさらに進化した
先進安全装備(運転支援システム)は、両者とも充実しています。
スバル フォレスターは、スバル独自の高度運転支援システム「アイサイト」が2021年8月に新世代のものへと進化。大幅に広角化されたステレオカメラや改良された制御ソフトの導入により、衝突回避をサポートしてくれる領域が拡大されるなど、それまで以上に多くのシチュエーションで安全運転をサポートしてくれるようになりました。
またアイサイトの人気機能である追従走行アシスト機能もブラッシュアップされ、従来型アイサイト以上になめらかで安心感のある追従走行を実現することで、ロングドライブ時のドライバーの負担はより一層軽減されるようになっています。
そしてもちろんマツダ CX-5もひと通りの運転支援システムを標準装備としたうえで、2021年12月の大幅改良時に、高速道路などでの渋滞時に自動的な追従走行をしてくれる「クルージング&トラフィック・サポート(CTS)」をオプションとして用意。さらに「アダプティブLEDヘッドライト(ALH)」のグレアフリー(防幻)ハイビームを12分割から20分割とすることで、夜間の視認性を高めています。
以上のとおり、「どちらが安全?」という問いに対しては「両者とも同じぐらい安全で楽ちん」というのが答えになるでしょう。
【ラウンド5:どっちがおしゃれ?】異論反論もあるでしょうが、デザインが素敵なのはマツダ CX-5!
おしゃれか否か。つまり「デザインの良し悪し」に絶対的な正解というのはないため、これは断言するべきではない項目かもしれませんが……それでもフォレスターとCX-5を比較する場合に限っては、断言しちゃってもいいのかもしれません。
結論から申し上げますと、おしゃれなのはマツダ CX-5です。
スバル フォレスターの内外装デザインが悪いとは思いませんが、デザインの方向性として「無骨」であることは間違いありません。
それに対してマツダ CX-5の内外装デザインは「洗練の極み」といってもさほど大げさではないもので、特に2021年12月のマイナーチェンジ後の、先進性と力強さを表現したというフロントグリルや、4つの楕円で構成される前後ランプは、SUVらしい力強さと都会的でエレガントな美しさが、見事に融合されています。
なんともスタイリッシュなマツダ CX-5の運転席まわり。写真は特別仕様車の「20S Black Tone Edition」。
ヘッドランプのデザインなどが変わったマツダ CX-5の最新世代。写真は特別仕様車「25S Sports Appearance」。
まぁここについては異論反論もあるというか「人それぞれ」の話になりますのでこれ以上は申し上げませんが、なるべく客観的に見たうえで「マツダ CX-5の圧勝」としたいとは思います。
ただ「スカした感じのデザインより、自分は朴訥なデザインのほうが好きだし、朴訥であるほうがむしろおしゃれなのだ!」という考え方もあるでしょう。そういった観点で見るのであれば、スバル フォレスターの無骨なフォルムも、もちろんかなり素敵ではあります。
【ラウンド6:どっちがお得?】4WDのCX-5はフォレスターより若干値が張るが、FFを選べばおおむね同等の価格に
ある意味いちばん気になる「価格」は、特別仕様車を除いたモデル全体で考えるとスバル フォレスターが293万7000~330万円で、マツダ CX-5が290万9500~375万1000円です。
しかしモデル全体で比較しても今ひとつピンとこないため、類似するグレード同士で比較してみましょう。といっても、両者の間には「類似するグレード」というのがあまりないのですが……。
●スバル フォレスター Advance|317万9000円
●マツダ CX-5 25S L Package(4WD)|343万2000円
スバル フォレスターのAdvanceというグレードは2Lエンジン+モーターというパワーユニットを搭載しており、それに対応するものとして、2.5Lガソリン自然吸気エンジンのマツダ CX-5 25Sを選択しました。またフォレスターのAdvanceもCX-5のL Packageも「本革シートが標準装備である」という点で似ています。
そんな両者のプライスを比較しますと、CX-5のほうが25万円ほど高いようです。この価格差についてどう感じるかは人それぞれでしょうが、4WDではなくFFのCX-5 25S L Packageは320万1000円ですので、「悪路を走る予定はない」という人がマツダ CX-5に乗る場合は、若干お安いFFモデルを選ぶのが得策となります。
【判定】全体としてはほぼ互角だが、悪路中心で考えるならフォレスター、都市部中心で考えるならCX-5が有利
以上の検討から判明した事実は、おおむね下記のとおりであると言っていいでしょう。
●使い勝手や安全装備を含む「性能」はおおむね互角
●ガソリンCX-5とe-BOXERフォレスター燃費もおおむね互角
●しかしディーゼルターボのCX-5は燃費良好
●価格はグレードによりけりなので何ともいえないが、類似グレード同士で比べるならスバル フォレスターのほうが若干お安い
●ただしマツダ CX-5には、スバル フォレスター以上の「おしゃれ感」がある。
最終結論としては、「ワイルドなSUV」が欲しいならスバル フォレスターがおすすめで、「スタイリッシュなSUV」が欲しいという場合にはマツダ CX-5おすすめ――ということになります。
ただしこの両者は本来、上記のようなシンプルなまとめ方はしづらい、それぞれ固有の強い個性を持っているSUVです。また同じ車種のなかでもパワーユニットが違えば、その個性と味わいも大きく変わってきます。
そのためより詳しくは、希望する装備などを細かく入力したうえでの月額リース料なども比較しながら、楽しく悩んでいただけましたら幸いです。
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執筆者
伊達軍曹 - 外資系消費財メーカー勤務を経て出版業界に転身。自動車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。以来、有名メディア多数で新車および中古車の取材記事を執筆している。愛猫家。
- <公開日>2022年2月15日
- <更新日>2022年2月15日
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