「スズキ アルト vs. ダイハツ ミラ イース」 その実力侮るなかれ! ベーシックな軽自動車のベストバイ決定戦

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今、軽自動車のなかでもっとも人気が高いカテゴリーは「スーパーハイトワゴン」と呼ばれる、非常に背が高くてスペース効率に優れるタイプです。しかし、それら軽スーパーハイトワゴンは「新車価格が(軽としては)ちょっと高い」という難点があり、また「あそこまで背が高くなくてもいい」「スライドドアは不要」と考えるユーザーも、世の中にはたくさんいます。

そういった意味で、スーパーハイトワゴンに次ぐぐらいの人気を集めているのが「ごく普通のベーシックな軽自動車」というカテゴリーです。特に背が高いわけではない軽ハッチバックのことを、自動車業界では「軽セダン」と呼ぶことが多いのですが、ハッチバックなのにセダンって呼び方、ちょっと違和感がありますよね? そのため、このコーナーでは軽セダンのことを「ベーシック軽自動車」と呼ぶことにします。

で、ベーシック軽自動車というカテゴリーのなかで人気を二分しているのが、2021年12月に発売された「スズキ アルト」と、2017年5月発売の「ダイハツ ミライース」です。

2021年12月にフルモデルチェンジを受けたスズキ アルト

こちらは2017年5月デビューのダイハツ ミラ イース

どちらも実用性と経済性に優れるベーシック軽自動車」であることは間違いないのですが、我々ユーザーは、もしも手に入れるとしたら両方ではなく「どちらか一台」に限定せざるを得ません。その場合、わたしたちはどちらを選べばいいのでしょうか? さまざまな観点から比較してみることにしましょう。

【ラウンド1:どっちが売れている?】登場年次の新しいスズキ アルトが優勢。だがダイハツ ミラ イースもいまだ善戦

まずは「今、実際どちらが売れているのか?」というデータを見てみます。

全国軽自動車協会連合会が発表した直近のデータによれば、スズキ アルトとダイハツ ミライースの販売台数は下記のとおりとなっています。

●2023年1~4月累計
スズキ アルト|2万5248台
ダイハツ ミラ|2万2199台

●2023年4月単月
スズキ アルト|5844台
ダイハツ ミラ|5540台

出典:軽四輪車通称名別新車販売確報 一般社団法人 全国軽自動車協会連合会

ダイハツ ミラの数字は、主に女性ユーザーをターゲットとしている派生車種「ミラ トコット」の販売台数も合算されており、スズキ アルトの数字も「ラパン」「ラパンLC」の台数が合算されています。そのため上記の数字は「完全に正確」というわけではないのですが、おおむねの傾向は間違いなく反映されていると考えていいでしょう。

で、決して大差ではありませんが、2023年4月までの累計も4月単月も「スズキ アルトのほうが売れている」という結果になっています。

この数字を「やはり、より設計が新しい(2021年12月デビュー)スズキ アルトが優勢である」と見ることもできますが、逆に「2017年5月デビューという“古い車”であるにもかかわらず、ダイハツ ミラ イースは健闘している=いまだ商品力はある」と見ることもできるでしょう。

スズキ アルトの運転席まわり。抑揚のある面や線により、各部に厚みと立体感が与えられている

こちらはダイハツ ミラ イース。スズキ アルトとそう大きく違うわけでもないが、全般的に「軽自動車らしいシンプルさ」がデザインの基本になっている

スズキ アルト

ダイハツ ミライース

【ラウンド2:どっちが広い?】おおむね同等だが、モデルチェンジを受けたスズキ アルトのほうが若干余裕あり

お次はボディサイズや車内の広さ、使い勝手などを比較してみましょう。

といってもボディサイズは両者ともほぼ同じで、全長と全幅はどちらも3395mm×1475mmという軽規格いっぱい。全高もアルトが1525mmのミライースが1500mmですので、ほんの少々違うぐらいでしかありません。同様に室内の寸法も両者おおむね同等ですが、スズキ アルトは2021年12月のフルモデルチェンジで背が高くなったため、室内高はダイハツ ミラ イースよりも20mm高くなっています。

フロントシートの形状や前席まわりの広さも、両者は「だいたい同じ」といえますが、スズキアルトは前述のフルモデルチェンジ時にフロントドア開口部の高さを20mm拡大したため、乗降性が改善されています。

そして後席まわりの広さは両者とも同じぐらいですが、ミライースの後席シートはかなり硬めで、座ってもお尻が沈み込みません。しかしアルトのほうはお尻がスッと沈み込むような作りですので、後席の快適性については「スズキ アルトのほうが若干上」といえるでしょう。

スズキ アルトの前後席。シートにはデニム調の表皮を採用

こちらはダイハツ ミラ イース。人が座る機会があるかどうかは別として、後席の座面は平板で硬めな印象だ

この種のベーシックな軽自動車で「車内の広さや快適さ」にこだわりたい人がどれほどいるかはわかりませんが、車内の広さについては「設計年次が新しいスズキ アルトのほうが若干優勢」とは言えます。

【ラウンド3:走行性能と燃費は?】スズキ アルトの上級グレードは出力も燃費も優秀

お次は「走行性能」です。

搭載エンジンはダイハツ ミライースが最高出力49psの直3ガソリンで、スズキ アルトも同46~49psの直3ガソリンですが、スズキ アルトの上級グレードは「ISG」(モーター機能付き発電機)とリチウムイオンバッテリーからなるマイルドハイブリッド機構を採用しています。

またスズキ アルトは2021年12月のフルモデルチェンジで「環状骨格構造」を採用して剛性を強化したほか、静粛性の向上や突き上げ感のない乗り心地を追求するなどして、快適性の向上が図られています。

スズキ アルトの「HYBRID X」と「HYBRID S」には、最新世代の「R06D」型エンジンとマイルドハイブリッド機構が採用された

そして両者の「燃費」はどうかというと、結論としては以下のとおりです。

●スズキ アルト(マイルドハイブリッド/FF):27.7km/L
●スズキ アルト(通常エンジン/FF):25.2km/L
●ダイハツ ミラ イース(FF):25.0km/L

カタログ値で2.7km/Lの差は「運転の仕方次第でどうとでも変わる」と言えます。しかし基本的には、燃費性能も走行性能も「設計年次が新しいスズキ アルト(のマイルドハイブリッド車)が若干優勢」と言うことができるでしょう。

スズキ アルト

ダイハツ ミライース

【ラウンド4:どっちが安全?】両者とも十分だが、アルトにはミラ イースにはない運転支援機能も

ダイハツ ミラ イースもスズキ アルトも、ベーシックな軽自動車でありながら運転支援システムはそれなりに充実しています。

両者に共通して標準装備されているのは、「いわゆる自動ブレーキ」や「車線逸脱警報」「誤発進抑制機能(前後)」「先行車発進お知らせ機能」「いわゆるオートハイビーム」です。これだけそろっていれば、両者とも「おおむね安心して運転できる」と評していいでしょう。

しかしスズキ アルトはダイハツ ミラ イースよりも登場年次が新しいだけあって、上記に加えて、眠気などによるふらつきを予防する「ふらつき警報機能」が標準装備となります。さらに上級グレードには、標識認識機能を備えたフルカラーヘッドアップディスプレイや、狭い場所でのすれ違いなどで重宝する「全方位モニター用カメラ」も、オプションとして設定可能です。

小さくてベーシックな軽自動車に「全方位モニター用カメラ」が必要と考えるかどうかは人それぞれでしょうが、客観的には「スズキ アルトのほうが安全装備は若干充実している」と評価できます。

【ラウンド5:どっちがお得?】車両価格から考える“お得度”はおおむねイーブンか

両モデルを“購入”する場合の、グレード別の車両価格は以下のとおりです。

●スズキ アルト HYBRID X(FF)|125万9500円
●スズキ アルト HYBRID S(FF)|109万7800円
●スズキ アルト L(FF)|99万8800円
●スズキ アルト A(FF)|94万3800円

●ダイハツ ミラ イース G“SA III”(FF)|123万2000円
●ダイハツ ミラ イース X“リミテッド SA III”(FF)|111万8700円
●ダイハツ ミラ イース X“SA III”(FF)|110万2200円
●ダイハツ ミラ イース L“SA III”(FF)|95万9200円
●ダイハツ ミラ イース L(FF)|89万3200円

それぞれのグレード構成が微妙に違うため一概に比較はできないのですが、「最上級グレード同士」あるいは「中間グレード同士」で比べてみると、価格については「だいたい同じぐらいだが、スズキ アルトのほうがちょっとだけ高い」と言っていいでしょう。

これは、前述した「アルトにはあるが、ミラ イースにはない機能」などを考慮し反映させたうえでの価格設定でしょうから、この金額だけを見て「ダイハツ ミラ イースのほうが安いからお得!」と判断するのは早計です。

正確には「スズキ アルトのほうがちょっと高めだが、機能の差を考えるなら両者のお得度はおおむねイーブンか、より新しい設計であるアルトのほうが若干お得か?」ぐらいにとらえるべきでしょう。

【判定】後発であるスズキ アルトのほうが全般的に優勢。だが「決定的な差がある」というほどではない

以上のとおり、スズキ アルトとダイハツ ミライースの諸性能および価格は「おおむね似たようなものではあるが、設計と登場の年次が新しいスズキ アルトのほうが若干有利である」ということがわかりました。

アルトのフルモデルチェンジが行われる前は、両者の差は本当に「ほとんどないかも!」という感じだったのですが、さすがに直近では、後発であるスズキ アルトのほうが全般的に若干優勢です。

しかしそれでも「両者の差はさほど大きいわけではない」というのも事実です。客観的なおすすめは設計年次が新しいスズキ アルトであるということになりますが、車というのは客観的な性能だけでなく「カタチや雰囲気、ブランドで選ぶもの」でもあります。

その意味で、もしもダイハツ ミラ イースのカタチや雰囲気のほうが好みであるのなら、あえてミラ イースを選んでみるのも決して悪くはありません。

とはいえ客観的には、今から乗るなら「スズキ アルト」のほうが若干有利であるとは思いますが。

スズキ アルト

ダイハツ ミライース

執筆者
伊達軍曹

外資系消費財メーカー勤務を経て出版業界に転身。自動車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。以来、有名メディア多数で新車および中古車の取材記事を執筆している。愛猫家。
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  • <公開日>2023年7月10日
  • <更新日>2023年7月10日
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