【目次】
抜群の使い勝手を誇る軽スーパーハイトワゴンに、今どき流行りのクロスオーバー的要素を大がかりに組み合わせた車というのは、これまではスズキの「スペーシア ギア」しか存在していませんでした。
しかしこのたびダイハツから、スペーシア ギアとよく似たキャラクターの「タント ファンクロス」という軽クロスオーバーが発売され、このジャンルもいよいよ“二強”が争う展開となってきました。
背が高いゆえの利便性とクロスオーバーSUV的な雰囲気、そしてアウトドアでのアクティビティに活用できるさまざまな装備が付いている両モデルはともに魅力的ではありますが、もしもどちらか一台を選ぶとしたら、果たして“どっち”にするべきなのでしょうか?
さまざまな観点から、両者を比較してみることにしましょう。
【ラウンド1:どっちのデザインが素敵?】人それぞれの好み次第だが、客観的に見れば互角か
いきなりですが、これはもう「人それぞれの好みによる」とするしかない問題です。
先発のスペーシア ギアはソフトな印象を与える丸目のヘッドランプがエクステリアでは特徴的ですが、インテリアにはアウトドアウォッチ風デザインのメーターを採用するなど、単にソフトな感じだけではない、車名どおりの「ギア(道具)っぽい感じ」が全体で上手に表現されています。
ポップでありながらギアっぽくもあるスズキ スペーシア ギア
スペーシア ギアの運転席まわり
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一方、後発のダイハツ タント ファンクロスは、ややつり上がった角目ヘッドライトなどが、いわゆる「ワイルドな感じ」を与えますが、インテリアではモダンな雰囲気のデジタルメーターを採用するなど、「クールな感じ」も同時に演出しています。
スズキ スペーシア ギアと比べると、いわゆる男性的な雰囲気が強めとなっているダイハツ タント ファンクロス
タント ファンクロスの運転席まわり
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こればっかりは好みの問題ですし、ボディカラーも両モデル、最近のクロスオーバーモデルならではの「趣味のいい色味」が豊富に用意されていますので、ここは「引き分け」とするほかありません。どちらを選んだとしても、内外装デザインには大いに満足できることでしょう。
【ラウンド2:どっちの使い勝手が良い?】車内の広さなどは互角だが、ファンクロスの「ミラクルオープンドア」はかなり便利
ボディサイズはスペーシア ギアが全長3395mm×全幅1475mm×全高1800mmで、タント ファンクロスが全長3395mm×全幅1475mm×全高1785mm(4WDは1805mm)ということでおおむね同じ。車内の寸法も、スペーシア ギアが長さ2155mm×幅1345mm×高さ1410mmであるのに対し、タント ファンクロスが長さ2125mm×幅1350mm×高さ1370mmと、「スペーシア ギアのほうが少しだけ長くて高い」とはいえますが、大局的には「おおむね同じぐらい」と見るべきでしょう。
後席スライドドアも、両モデルともワンタッチ式の両側電動で、細かな違いはありますが、それぞれに便利な開閉およびロック/アンロックの機能が付帯されています。
スズキ スペーシア ギアXZ TURBOの車内
こちらはダイハツ タント ファンクロス ターボ
ただしここで大きく異なるのは、スズキ スペーシア ギアの助手席ドアと助手席側スライドドアの間にはBピラーという柱が生えているのに対し、タント ファンクロスにはそれがないため(正確には前後ドアにピラーが内蔵されているため)、ダイハツが「ミラクルオープンドア」と呼んでいる超開放的な開口部を利用できるということ。ファンクロスのベースである「タント」同様、タント ファンクロスの「ミラクルオープンドア」はダイハツ車にしかない美点です。
写真上は都合によりタント ファンクロスではなく通常のタント。いずれにせよ助手席側のBピラーという柱がないため、後席や荷室へのアクセス性は抜群
とはいえ車内に乗り込み際の「ステップ高」はダイハツ タント ファンクロスが359mmであるのに対し、スズキ スペーシア ギアは345mm。14mmの差でしかありませんが、ここについてはスペーシアが若干有利です。
アウトドアで車を使うとなるとどしてもシートに泥汚れが付くものですが、スペーシア ギアもタント ファンクロスもシートは全席、汚れに強く、掃除もしやすい撥水・防汚加工がされています。また後席の背面とラゲッジルームが防汚または防水加工されているというのも、両モデルに共通しています。
タント ファンクロスもスペーシア ギアもほぼ同様に、写真上のようなイメージで汚れや水などが付いた道具類を荷室にガンガン放り込むことができる作りになっている。写真はダイハツ タント ファンクロス
そのほかにも挙げていけばキリがないのですが、総じていえば「クロスオーバー車としての使い勝手は両者ほぼ互角だが、『ミラクルオープンドア』がある分だけ、ダイハツ タント ファンクロスのほうが少し有利――というのが結論となります。
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【ラウンド3:走りと燃費はどちらが良好?】走りも燃費も大局的にみるならほぼ同等
スズキ スペーシア ギアは「HEARTECT」というスズキの新世代プラットフォームを使用していますが、ダイハツ タント ファンクロスも同様に新世代の「DNGA」という思想に基づくプラットフォームを使用。ここについては「ほぼ優劣なし」ということになるはずです。
搭載エンジンはどちらも660ccの直3自然吸気またはそのターボ付き。最高出力はどちらもまったく同じで、最大トルクもほとんど同じ。それらを発生する際のエンジン回転数に微妙な違いはありますが、さほどの違いではありませんので、走りの力強さも「おおむね同じぐらい」ということで間違いありません。ただスペーシア ギアは全車マイルドハイブリッド付きですので、発進時や坂道、高速道路での合流時などではよりスムーズな加速を行うことはできます。
WLTCモード燃費は、2WD(FF)同士で比較した場合、スペーシア ギアのノンターボ車が21.2km/Lで、タント ファンクロスのノンターボ車は21.9km/L。ターボ車はスペーシア ギアが19.8km/Lで、タント ファンクロスが20.6km/L。いずれもタント ファンクロスのほうが少しだけ良好ですが、まぁこの程度の差であれば「実際はおおむね同じぐらい」と見るのが正解です。
走行性能も燃費性能も似通っている両者。写真はダイハツ タント ファンクロスのオプション装着車で、ボディカラーは「ブラックマイカメタリック×サンドベージュメタリック」の2トーン
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【ラウンド4:どっちの運転支援システムが優秀?】
スペーシア ギアは「スズキ セーフティ サポート」というパッケージが全車標準装備で、タント ファンクロスも「スマートアシスト」というダイハツのパッケージが全車に標準装備されています。その意味で、運転支援システムに関しては「両者とも充実している」と言えるでしょう。
とはいえスズキ スペーシア ギアは「後退時ブレーキサポートも付いている」「アダプティブクルーズコントロールが標準装備(タント ファンクロスはオプション)」「ヘッドアップディスプレイも標準装備」という点から、ダイハツ タント ファンクロスよりもやや優位ではあります。
運転支援システムは両者とも充実しているが、スズキ スペーシア ギアの衝突被害軽減ブレーキは前進時だけでなく後進時にも作動する
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【ラウンド5:どっちがお得?】なんと、車両価格もほぼ同じ!
ここまで、細かな違いは当然あるものの「おおむね互角」といったニュアンスが続いてまいりましたが、肝心の“お値段”についてはどうでしょうか? 似ているグレード同士で比較してみましょう。
【ノンターボ車】
●スズキ スペーシア ギア HYBRID XZ(2WD)|172万5900円
●ダイハツ タント ファンクロス(2WD)|172万1500円
【ターボ車】
●スズキ スペーシア ギア HYBRID XZ TURBO(2WD)|180万2900円
●ダイハツ タント ファンクロス ターボ(2WD)|180万9500円
困ったことに(?)、車両価格についても「おおむね互角」という結果になってしまいました。「アダプティブクルーズコントロールやヘッドアップディスプレイが標準な分だけ、スペーシア ギアのほうが若干お得」と見ることもできますが、とはいえ「それでもおおむね同じぐらい」と見るほうが妥当ではあるでしょう。
ちなみにオリックスカーリースを利用する場合の月額料金はスズキ スペーシア ギアが2万2500円~で、ダイハツ タント ファンクロスも2万2500円~とのこと。ここに関しても「互角」ということになってしまいました。
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【判定】荷物の出し入れが多い人にはタント ファンクロスがいいが、そうでないなら完全に「引き分け」
以上のとおり、「軽スーパーハイトワゴンのクロスオーバーモデル」というジャンルで先行していたスズキ スペーシア ギアと、後発のダイハツ タント ファンクロスは「いくつかの違いはあるものの、総合力はほぼ互角である」という結論になりました。
こうなってくると、あとは見た目やブランドイメージなどに応じて「お好きなほうを入手すればそれでOK」ということになるわけですが、それでも両者の決定的な違いとしてあるのは「ミラクルオープンドアの有無」でしょう。
人や大きめの荷物を頻繁に出し入れする予定がある人は、やはりダイハツ タント ファンクロスのほうが何かと便利に使えるはずです。
とはいえ、そういった使い方をあまり想定していない人に対しては「どちらもオススメです!」というのが最終結論となります。
諸性能もたたずまいも素晴らしい両モデルですので、「便利に使えるおしゃれな軽自動車」を探している人は、両モデルともさらに積極的にチェックしてみることをおすすめいたします。
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執筆者
伊達軍曹 - 外資系消費財メーカー勤務を経て出版業界に転身。自動車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。以来、有名メディア多数で新車および中古車の取材記事を執筆している。愛猫家。
- <公開日>2022年11月30日
- <更新日>2022年11月30日
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