車に詳しい人には「まったく別の車」に見えるのかもしれませんが、一般的な目線で見ると「ほぼそっくり!」ともいえる、スズキ ハスラーとスズキ クロスビー。
この2モデルは何がどう違い(またはどう同じで)、そしてもしも自分が乗るとしたら“どっち”を選ぶのが正解なのでしょうか? さまざまな観点から、両者を比較してみることにしましょう。
【ラウンド1:一番大きな違いは?】ハスラーは660ccの軽自動車で、クロスビーは1Lターボの小型乗用車
見た目的にはよく似ているスズキ ハスラーとクロスビーの根本的な違いは、「ハスラーは軽自動車で、クロスビーは登録車(いわゆる普通車)である」ということです。現行型ハスラーのベースは軽スーパーハイトワゴンの人気モデルであるスペーシア、一方のクロスビーはコンパクトSUVのイグニスがベースと、実は成り立ちはまったく違うのです。
2014年に初代が登場し、現在は2019年にデビューした2代目が販売されているハスラーは、「軽クロスオーバー」という新ジャンルの第1号となった軽自動車。当然ながら小さなボディに、排気量660ccのエンジンを積んでいます。
いっぽうのスズキ クロスビーは、ワゴンとSUVを融合させた「小型クロスオーバー車」として2017年に誕生しました。搭載エンジンは1Lの活発なターボエンジンで、ボディサイズもハスラーよりひと回りかふた回り大きいといったニュアンスです。
こちらがスズキ ハスラー。エンジン排気量は660ccで、ボディサイズも軽自動車規格に収まっている。
こちらがスズキ クロスビー。デザイン的にはハスラーとよく似ているが、ボディサイズは2回りほど大きく、エンジンもターボ付きの1Lが搭載されている。
【ラウンド2:ボディサイズと居住性、実用性の違いは?】ボディサイズはクロスビーのほうが大きいが、室内長はハスラーが長い
ハスラーは前述のとおり軽自動車ですので、「軽自動車規格」として国が定めている枠の範囲内で作られています。ボディサイズについては、軽自動車は「全長3.4m以下、全幅1.48m以下、全高2.0m以下」と定められています。いっぽうのクロスビーは普通車(小型車)ですので、何のしばりもありません。とはいえ大きすぎるスズキ車はあまり売れないため、それなりにコンパクトなサイズではあります。
両者の具体的なボディサイズは下記のとおりです。
●スズキ ハスラー(現行型)
・全長:3395mm
・全幅:1475mm
・全高:1680mm
●スズキ クロスビー
・全長:3760mm
・全幅:1670mm
・全高:1705mm
全高は2.5cmしか違いませんが、全長は36cmほど、全幅は20cmほど異なります。
やはり普通車(小型車)であるクロスビーのほうが断然大きいようですが、いちおう「車内寸法」も見てみましょう。
●スズキ ハスラー(現行型)
・長さ:2215mm
・幅:1330mm
・高さ:1270mm
●スズキ クロスビー
・長さ:2175mm
・幅:1355mm
・高さ:1280mm
室内寸法についてはさほどの開きはなく、室内長はむしろハスラーのほうが長いという数字になっています。
近年の軽自動車の室内は非常に広く、特に後席の居住空間は普通車以上に広かったりもします。しかも現行型のハスラーは前述のように広さ自慢のスーパーハイトワゴンであるスペーシアがベースとなっています。「運転席と助手席の間隔が狭い」「4名乗車の状態だと荷室が狭い」というのはありますが、最大2名乗車で使う場合が多いのであれば、軽のハスラーでも実用上の問題は少ないかもしれません。
室内長は意外と長いハスラー。ただしリアシートを普通に使う場合のラゲッジスペースはさすがにやや狭めとなる。
こちらがクロスビーの車内。各部の質感なども、当然ながら軽自動車であるハスラーよりも上質だ。
【ラウンド3:走りの違いは?】総合的な能力はさすがにクロスビーが上。だが「近距離スペシャル」としてはハスラーも十分以上
ハスラーは「軽自動車規格」というものにしばられていますので、搭載エンジンの排気量は規格いっぱいの660ccです。最高出力64psの直3ターボと同49psの直3自然吸気の2種類をラインナップしており、どちらも、ハスラーの小ぶりで軽量なボディを走らせるには十分な力を有しています。
しかしながらクロスビーは排気量1Lとなる直3直噴ターボエンジンを搭載していて、これが「K10C型」という、1Lと小さいくせに1.5Lエンジンと同等の力強さを誇る、端的にいってかなり素晴らしいエンジンなのです。
そのため、エンジンの魅力や力強さに関してはクロスビーの圧勝であり、サスペンション形式なども両者は同じなのですが、やはり軽よりも普通車(小型車)の足まわりやボディのほうがどうしてもしっかり感は強いため、走りについては「クロスビーのほうが断然魅力的」と言うほかありません。
ただし軽自動車であるハスラーも、特にターボ版のほうはそれなり以上によく走る車ですので、「高速道路を使った長距離移動はあまりしない」というタイプの人であれば、ハスラーでも特に問題はありません。
ハスラーが搭載する660ccの直列3気筒ガソリンエンジン
こちらはクロスビーのK10C型1Lターボ付きエンジン。
【ラウンド4:安全装備の違いは?】どちらも普通に充実しているが、ハスラーは一部が省略されている
両者の安全装備は「おおむね同等ではあるが、さすがに車格も価格も上なクロスビーのほうがより充実している」というのが結論になります。
軽自動車であるハスラーも、予防安全技術がセットになった「スズキ セーフティ サポート」は標準装備で(※最廉価グレードの「非装着パッケージ」を除く)、登録車であるクロスビーも、言うまでもなく標準装備です(※最廉価グレードの「HYBRID MX」を除く)。
ただし「車線の維持」に関連する機能において、ハスラーは「車線逸脱抑制機能(はみ出さないようにサポートしてくれる機能)」であるのに対し、クロスビーは「車線維持支援機能(車線の中央付近の維持をサポートしてくれる機能)」も搭載されています。
またその他の機能も、クロスビーは最廉価グレードを除く全車が「全部盛り」であるのに対し、ハスラーの下位グレードでは一部省かれている機能もあります。
このあたりは車格と価格が違うゆえに致し方ない部分ですが、総合的にはやはり「安全装備はクロスビーのほうが充実している」と言えます。
しかしハスラーの安全装備も軽自動車としては普通以上に充実していますので、ここはあまり気にする必要はない部分かとも思います。
クロスビーには、車線逸脱を抑制する機能だけでなく「車線の中央付近の維持をサポートしてくれる機能」も搭載されている。
【ラウンド5:価格の違いは?】月額リース料はハスラーのほうが1万円以上安い
軽自動車であるハスラーと普通車(小型車)であるクロスビーの車両価格を比べれば、クロスビーのほうが高くなるのは当然のこと。ディーラーで新車を購入する場合の車両価格は、それぞれの最上級2WD車同士で比較すると下記のとおりとなります。
●ハスラー HYBRID Xターボ(2WD)|161万2600円
●クロスビー HYBRID MZ(2WD)|206万2500円
その差は「約45万円」ということになるでしょうか。そしてディーラーで購入するのではなく、「ORIXカーリース・オンライン」を通じてリース契約を結ぶ場合の費用目安は下記のとおりです。
【「いまのりセブン」利用の場合】
●ハスラー HYBRID Xターボ(2WD)|2万6400円/月
●クロスビー HYBRID MZ(2WD)|4万370円/月
上記はオプション装備などを含めていない「目安」の金額ではありますが、やはり普通車(小型車)であるクロスビーのほうが月々のリース料は1万円以上高くなるようです。
【判定】カタチは似ているが中身(方向性)は違う。「使用目的」や「使用環境」に応じて選ぶべき
以上の比較検討からわかった、一見そっくりなスズキ ハスラーとクロスビーの「違い」というか「ニーズ別のおすすめ」は、おおむね下記のとおりだといっていいでしょう。
●「軽は好きじゃない」という人は問答無用でクロスビーを
個人的には軽自動車が悪いとはまったく思いませんが、「イメージがあまり良くない」「我が家には小さすぎる」「衝突安全性の面でちょっと不安」と考える人も世の中にはいます。そう考える場合には、当然ながらハスラーではなくクロスビーがおすすめとなります。
●「長距離移動が多い」という人はクロスビーを
ハスラーはとってもよく走る新世代の素晴らしい軽自動車ですが、「軽自動車規格」という枠の中で作られている車ですので、高速走行時や山道での安定性や楽しさには、やはり限界はあります。そのため高速道路を使っての長距離移動や、急な山坂道を走る機会が多いという人は、クロスビーを選んだほうが満足度は高くなるでしょう。
スズキ クロスビーの運転席まわり。
●「近場での使用がほとんど」という人はハスラーも要検討
総合的に見た場合の走行性能は(当然ながら)クロスビーのほうが上ですが、主に近場を走るのであれば、正直さほど高性能な車ではなくても特に問題はありません。そしてハスラーは、軽自動車という枠組みの範囲内では「とっても高性能な車」であり、車内を広く使うこともできる車です。そのため、考え方と趣味嗜好次第ではありますが、あまり遠出をしないのであれば「ハスラーでぜんぜん十分」と考えることもできます。
●「コストを安く済ませたい」という人はハスラーを
コストについてはハスラーの圧勝です。購入する場合は、車両価格も自動車税(ハスラーは軽自動車税)もまったく違いますし、前述したとおり月額リース料も、軽自動車であるハスラーのほうが断然お値打ちです。何かと安くあげたいならハスラーがいいでしょうし、安い割には「ぜんぜん安っぽい車ではない」というのがスズキ ハスラーのいいところ。ハスラーを買うなりリースするなりすれば、きっと大満足な「お手頃カーライフ」が送れることでしょう。
スズキ ハスラーの運転席まわり。
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執筆者
伊達軍曹 - 外資系消費財メーカー勤務を経て出版業界に転身。自動車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。以来、有名メディア多数で新車および中古車の取材記事を執筆している。愛猫家。
- <公開日>2022年4月11日
- <更新日>2022年4月11日
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