【同クラス人気車対決】「ダイハツ ハイゼットカーゴ vs スズキエブリイ」アウトドア派にも大人気!働く軽キャブオーバーバン王者決定戦

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軽キャブオーバーバンというのは、エンジンが車の前方ではなく運転席の下あたりに配置されている軽バンのこと。前方にエンジンがない分だけ運転席を前側に寄せられますので、荷室長を広くとることができます。そのため軽キャブオーバーバンは配送業者さんに広く使われています。

そして商用の軽キャブオーバーバンは、プロの業者さんだけでなくキャンプや釣り、車中泊などを楽しみたいアウトドア派からも高く支持されているジャンルです。

そんな商用軽キャブオーバーバン界の二大巨頭といえるのが、長らく「ニッポンの最強道具グルマ」ともいわれてきたスズキ エブリイと、2021年12月に17年ぶりのフルモデルチェンジを受けたダイハツ ハイゼットカーゴ

この2モデルは何がどう違い(またはどう同じで)、そしてもしも自分が乗るとしたら、“どっち”を選ぶのが正解なのでしょうか? さまざまな観点から、両者を比較してみることにしましょう。

【ラウンド1:どっちの荷室が広い?】数値的にはハイゼットカーゴのほうが少しだけ広いが?

軽キャブオーバーバンでもっとも気になるのは「車内(荷室部分)の広さ」です。そのあたり、両者はどのぐらい違うのでしょうか? まずは広さの数値を見てみましょう。

【ダイハツ ハイゼットカーゴ】
・荷室長(2名乗車時):1915mm
・荷室幅(4名乗車):1410mm
・荷室高:1250mm
・助手席前倒し時スペース長:2650mm

【スズキ エブリイ】
・荷室長(2名乗車時):1910mm
・荷室幅(4名乗車):1385mm
・荷室高:1240mm
・助手席前倒し時スペース長:2640mm

見てのとおり、各数値はハイゼットカーゴのほうがそれぞれ少しずつ上回っています。これは、2015年に発売されたスズキ エブリイをダイハツが徹底的に研究し、それを上回るべく2021年12月に新型ハイゼットカーゴを発売したわけですから、ある意味当然のことです。

また「完全商用向け」といえるグレードの荷室長は新型ハイゼットカーゴのほうが5mm長いのですが、「乗用にも向いているグレード」同士で比較すると、両者の荷室長は1820mmとまったく同じです。さらに積載可能なみかん箱の数も、ダイハツ ハイゼットカーゴが68個であるのに対し、スズキ エブリイは69個と微妙に上回っています。

それゆえ、「どちらの荷室が広いか?」という問いに対しては「後発であるハイゼットカーゴのほうが微妙に広いが、実質的にはおおむね同じぐらい」というのが答えになるでしょう。

写真は新型ダイハツ ハイゼットカーゴの荷室スペース。荷室上部のスクエア化で空間を拡大し、従来型では凸凹のあった側面や床面をフラット化している

【ラウンド2:どっちの荷室が使いやすい?】開口部の広さと低さはハイゼットカーゴが有利

アウトドアなどのために軽キャブオーバーバンを使う際は、荷室の広さだけでなく「その使い勝手の良し悪し」も重要となります。両者の荷室の使い勝手はどのぐらい違うのでしょうか? まずは数値から見てみましょう。

【ダイハツ ハイゼットカーゴ】
・バックドア開口高:1165mm
・バックドア開口幅(最大値)1345mm
・荷室フロア地上高:630mm
・スライドドア開口高:1210mm
・スライドドア開口幅:785mm

【スズキ エブリイ】
・バックドア開口高:1165mm
・バックドア開口幅(最大値)1340mm
・荷室フロア地上高:650mm
・スライドドア開口高:1255mm
・スライドドア開口幅:775mm

開口部の広さや低さについては、荷室そのものの広さよりも差が大きくなっています。バックドア開口高は両者とも1165mmで同じですが、それ以外においては、ハイゼットカーゴの開口部のほうが「やや広くて低い=荷物の出し入れがしやすい」という数値になっています。

また新型ダイハツ ハイゼットカーゴには、さまざまなものの取り付けと固定に役立つ「ユースフルナット」というものが荷室に多数装備されている点も特徴です。

スズキ エブリイの荷室が使いにくいということはまったくないのですが、ここはやはり「王者エブリイを徹底研究したうえで登場した最新のハイゼットカーゴのほうが、荷室の使いやすさは若干上である」と考えるのが正解でしょう。

ダイハツ ハイゼットカーゴの車内

こちらはスズキ エブリイ

【ラウンド3:走行性能と燃費は?】燃費はおおむね同等だが、走行フィールはハイゼットカーゴが上

搭載エンジンは両者とも直列3気筒の0.66Lですが、スズキ エブリイが自然吸気エンジンのみであるのに対し、ダイハツ ハイゼットカーゴは最高出力64psのターボ付きエンジンを選ぶこともできます。

動力性能は両者とも自然吸気エンジンでも十分かと思われますが(そもそも長距離をかっ飛ぶタイプの車ではありませんから)、高速道路を使う機会が多い人にとっては、ダイハツ ハイゼットカーゴの「クルーズターボ」という最上級グレードが有利となります。

WLTCモード燃費は、乗用にも向いているグレード同士で比べた場合は下記のとおりです。

●ダイハツ ハイゼットカーゴ クルーズ 2WD(CVT):14.9km/L
●スズキ エブリイ JOIN ハイルーフ 2WD(4速AT):14.6km/L

0.3km/Lの差はありますが、まぁここは「だいたい同じぐらい」と考えてOKでしょう。

こちらがスズキ エブリイのJOINというグレード。写真のボディカラーは「クールカーキ」

しかし「走行フィールの良し悪し」に関しては、最新の考え方と技術を伴って2021年暮れに登場した新型ダイハツ ハイゼットカーゴのほうが良好であると考えられます。

旧態依然――とまでは言いませんが、2015年にキープコンセプト的なモデルチェンジを受けて登場したスズキ エブリイに対し、2021年12月発売のダイハツ ハイゼットカーゴは「DNGA」という新世代の考え方に基づいたプラットフォームを採用し、新開発されたCVT(無段変速機)を組み合わせています。ターボ付きエンジンのグレードであれば本当によく走りますし、ノンターボのグレードでも力感は十分で、快適でもあります。

それゆえここは、「燃費はおおむね同程度だが、走りの気持ちよさはダイハツ ハイゼットカーゴに軍配が上がる」という結論になります。

設計年次が新しい分、気持ちよく走ることができる新型ダイハツ ハイゼットカーゴ

【ラウンド4:どっちが安全?】スズキ エブリイも一部改良を行ったことでほぼ同程度に

ダイハツの予防安全パッケージ「スマートアシスト」を全車に標準装備して登場したハイゼットカーゴに対し、スズキ エブリイは正直若干後れを取っていました。

しかし新型ハイゼットカーゴに対抗する意味合いでスズキも2022年4月、「セーフティサポート装着車」にバックアイカメラ付きディスプレイオーディオをオプション設定するとともに、「スズキ セーフティサポート」をPCという上から2番目のグレードに標準装備し(※最上級グレードはもともと標準装備)、それ以下のグレードにもオプションとして設定しました。

それゆえ「スズキ セーフティサポート付きの個体であれば」という条件付きですが、両者の先進安全装備のレベルは「だいたい同じぐらい」といっていいでしょう。

ダイハツ ハイゼットカーゴは全車「スマートアシスト」を標準装備。写真は「ブレーキ制御付誤発進抑制機能 (前方・後方)」のイメージカット

【ラウンド5:どっちがお得?】一概にはいえないが、ハイゼットカーゴのほうがちょっと安い

ある意味いちばん気になる「価格」は、類似するグレード同士で比べると下記のとおりとなります。

●ダイハツ ハイゼットカーゴ クルーズ 2WD(CVT)|133万1000円
●スズキ エブリイ JOIN(ハイルーフ)2WD(4速AT)|138万7100円

細かな装備差もありますので一概にはいえませんが、ここも後発であるダイハツ ハイゼットカーゴが「ライバルよりもちょっと安いプライス」に設定したようです。実際に購入したりリース契約を結ぶ際はオプション装備のチョイスに応じて総額が変わりますので本当はなんともいえないのですが、あくまで基本的には「ダイハツ ハイゼットカーゴのほうがちょっとお安い」ということになります。

【判定】設計が新しい分だけ、ダイハツ ハイゼットカーゴは多くの面で少しずつ勝っている

どちらも「軽自動車規格」という成約の中で最善を目指して作られた両者だけあって、巨視的に見るならば「ダイハツ ハイゼットカーゴとスズキ エブリイの実力は似たようなもの。どちらも素晴らしい軽キャブオーバーバンである」と言うことができるでしょう。

しかしミクロに細かく見るのであれば、やはりエブリイを徹底研究したうえでつい最近リリースされたダイハツ ハイゼットカーゴのほうが「多くの面で少しずつ上回っている」と結論づけることができます。

もちろんブランドイメージやデザイン、あるいは乗り味などに対する「好みの問題」というのはありますし、スズキ エブリイは依然として「ニッポン最強クラスの道具グルマである」と評価できる車です。

しかしあくまでも客観的かつ機械的に判定するのであれば、このライバル対決は「ダイハツ ハイゼットカーゴの僅差での勝利」という結論になるでしょう。

ダイハツ ハイゼットカーゴ

スズキ エブリイ

執筆者
伊達軍曹

外資系消費財メーカー勤務を経て出版業界に転身。自動車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。以来、有名メディア多数で新車および中古車の取材記事を執筆している。愛猫家。
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  • <公開日>2022年7月21日
  • <更新日>2022年7月21日
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