「かわいい車」ランキング プロが選んだTOP5
【2023年最新版】

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1970年代末から始まった「かわいい車」の歴史

車というのは、一般的には「最高出力400psのスポーツカー!」「プレステージ性の高いラグジュアリーサルーン!」「どんな悪路も突き進めるクロカン四駆!」的な、いわゆる“男っぽさ”と言われる要素を核とするモデルが人気を集める場合が多いものです。

しかし世の中の住人の約半数は女性ですので、当然ながら「女性を主なターゲットとして開発された車」の数も多く、あくまで一般論ですが、女性は“かわいい”とされるデザインや雰囲気を好む場合が多いため、当然の帰結として、世の中にはたくさんの「かわいい車」が存在しています。

「可愛い車」あるいは「世の中の女性をターゲットとして開発された車」が日本で登場し始めたのは、1970年代の終わり頃のことでした。それまでの日本では「運転免許を持っているのはお父さんだけ」みたいな状況であったため、必然的に車も「男性っぽいモノ」が中心だったのですが、1970年代後半になると女性ドライバーの数も急増。「お父さんの大きな車だけじゃなく、わたし専用の小さな自動車も欲しい」と思う女性が増えてきました。

2000年代には「キュート系の可愛らしさ」が極限に

そういったマーケットの変化に敏感に反応して作られたのが、「アルト、47万円」というCMのキャチコピーで一世を風靡したスズキのコンパクトカー、初代アルトです。女性ユーザーへのアピールを念頭にイメージカラーを“赤”にした初代スズキ アルトは爆発的なヒットを記録。発売から2年後には「アルトユーザーの2人に1人は女性」という状況になったそうです。

そして時は流れて2000年代に入ると、フランス語でウサギを意味する「Lupin」を車名とした、日本における“かわいい車第1号”といえる(?)初代スズキ アルト ラパンが誕生。2004年には「ダイハツ ムーヴ ラテ」という超かわいいデザインの軽自動車が“ぬいぐるみ系”という新ジャンルを創出し、その後継モデルに相当する「ダイハツ ミラ ココア」という超キュートな軽自動車は、長きにわたって大人気を博しました。

2002年に登場して爆発的にヒットした初代スズキ ラパン

2004年に誕生した“超ぬいぐるみ系”といえるダイハツ ムーヴ ラテ

近年は「ユニセックス系の可愛さ」が主流に

しかし近年はご存じのとおりジェンダーレスあるいはジェンダーフリーの考え方が主流となっているため、「かわいい車の可愛さ」も、昔のそれとは少々変わってきています。

具体的には、ダイハツ ミラ ココアのような「あからさまなキュートさ」の追求はもはや廃れていて、現在は、2018年に登場したダイハツ ミラ トコットという女性向けモデルのデザインに代表される「ユニセックスな感じこそがおしゃれでカワイイ」といった考え方にシフトしているのです。

2018年に発売された「ダイハツ ミラ トコット」。女性向けに開発された車両だとアナウンスされたが、デザインの方向性は明らかに“ユニセックス”なニュアンスに変化している

これは、ビジネスのシーンでも「ヒールの付いたパンプス」ではなく「歩きやすいスニーカー」を選ぶ女性が増えてきた昨今の世相の変化と、自然にリンクしているのでしょう。「時代の空気」ってやつです。

前置きがやや長くなりましたが、そんなトレンドの変化を念頭に置きつつ、今おすすめの「かわいい車」をピックアップしてみましょう。

1位 「スズキ ラパン LC」ちょいレトロな雰囲気を備えた“かわいい車”の代表格!

2002年から一貫して「可愛い軽自動車」であり続けているスズキ ラパン(旧名アルト ラパン)の最新作。2015年に登場した3代目ラパンが2022年6月に一部改良された際に追加された、ちょいレトロな雰囲気の内外装を持つモデルです。

なんとも印象的なフロントマスクは「かわいい」とも、失礼ながら「ぶさかわいい」ともいえるデザインで、2000年代のかわいい車に見られた「とにかくキュートでぬいぐるみみたいにカワイイ感じ!」とは少し異なるニュアンスが、大いに“今っぽい”と言えます。

エクステリアカラーにはモノトーンもありますが、特にかわいいのは2トーンのほうでしょう。お好み次第ではありますが、「トラッドカーキメタリック」という淡いオリーブ色のようなボディカラーに「アーバンブラウン」という色味のルーフを合わせた仕様はかなりカワイイのではないかと思います。

インテリアはグレードによって2種類の仕様に分かれますが、いずれもシックなオフホワイトとブラウンを基調とした「過剰に女性っぽくはない可愛さ」にあふれていて、グレンチェックに近いチェック柄のシートも絶妙です。

ちなみに車本体のほうも2022年6月の一部改良で、夜間の歩行者も検知可能な「デュアルカメラブレーキサポート」が全車に標準装備され、USBタイプA/タイプCソケットも全車に標準装備されるなど、いろいろと安心できる進化を遂げています。

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スズキ アルトラパンLC

2位 「スズキ ハスラー」男女兼用のアウトドアウェアに近い可愛さ!

スズキ ハスラーは、2014年に初登場した「軽SUV」の代表的なモデル。現在は2019年12月にデビューした2代目のハスラーが販売されています。

エクステリアおよびインテリアのデザインは、2000年代までのカワイイ車に見られた「いかにも女性向けっぽい感じ」ではなく、むしろその真逆といえる「アウトドアギアっぽいタフな感じ」です。しかし過剰にタフというか、いわゆるマッチョすぎるデザインには決してなっておらず、「男女兼用のアウトドア用品やウェア」に近いニュアンスとなっている点が、この車の可愛さの根源です。「ある意味かわいい」といった感じでしょうか。

ボディカラーも「デニムブルーメタリック」や「オフブルーメタリック」、あるいは「シフォンアイボリーメタリック」などの“ギアっぽさ”と“可愛さ”が絶妙にブレンドされている色味が多く、こちらも前述のラパン同様、2トーンの仕様が特にかわいいと思われます。

もちろん車としての使い勝手や走行フィールも非常に良好で、特にターボ付きのグレードは高速道路などでもスイスイ快調に走れます。また2022年5月には仕様変更が行われ、全車速追従機能付きのアダプティブクルーズコントロール(高速道路で前方の車両を自動的に追従してくれる装置)と車線逸脱抑制機能が全車標準装備となり、全方位モニター付きメモリーナビゲーション装着車には、狭い道ですれ違う際の接触防止をサポートする「すれ違い支援機能」が採用されています。

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スズキ ハスラー

3位 「ホンダ N-BOX」“シンプルな雑貨”または“忠実な愛犬”に近い可愛さあり!

これも、2000年代的なニュアンスではなく“2023年の空気感”に合ったニュアンスの可愛さを備えている軽自動車だといえるでしょう。

スーパーハイトワゴンと呼ばれる、要するに「ものすごく背が高くて四角い軽自動車」であるため、2000年代までの「フェミニンなかわいさ」は外観にはほとんどありません。しかしこの四角四面な道具感といいますか、「私のためにがんばってくれちゃう忠実な愛犬感」が、「ある意味かわいい!」と思えてしまう――というメカニズムです。

しかしインテリアデザインのほうは、最近流行りの「シンプルな雑貨感」が強く、また軽自動車としては内装の質感もかなり高いため、そちらについては間違いなく「普通にけっこうかわいい」と思えるはずです。

ホンダ N-BOXは今、普通車を入れて考えても「日本で一番売れている車」ですので、車としての出来はほぼ文句なしです。背が高いので車内は本当に広々していますし、背が高いからといって、カーブを曲がる際などに不安を覚えるということもありません。そして先進運転支援システムのパッケージである「Honda SENSING」も全車標準装備となっています。

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ホンダ N-BOX

4位 「フィアット 500」内外装すべてに“甘すぎない可愛さ”が充満している!

輸入車の、しかも軽自動車ではなく普通車でも問題ないのであれば、イタリアの「フィアット 500」はかなりおすすめできる“かわいい車”です。

この車のデザインモチーフとなったのは、アニメ『ルパン三世』の劇中でルパンたちが乗っている「フィアット ヌオーヴァ500」という往年の、小さなかわいいイタリア車。そのエッセンスを現代の技術で蘇らせ、2008年に発売されたのが、こちらの現代版フィアット 500です。

エクステリアもインテリアも「甘すぎない可愛さ」に満ちているハイセンスなものですが、特にオフホワイトの樹脂とカラフルなパネルを多用したインテリアのデザインは、日本の多くの“かわいい車”が(おそらくは)参考にしているはずです。

エンジンは1.4Lと1.2L、それに「0.9Lターボ」というちょっと変わった方式があって、そのほかにEV(電気自動車)もありますが、おすすめは0.9Lターボエンジンです。これがまたなんとも躍動感にあふれているエンジンですので、きっと気に入るはずです。そのほかでは1.4Lでもいいのですが、1.2Lはちょい非力に感じるかもしれません。

5位 「ミニ」豊富なパーツを使って“自分だけの可愛さ”を作れる一台!

輸入車版の“かわいい車”といえば、コレを外すわけにはいかないでしょう。1960年代に英国で開発された「ミニ」という名作コンパクトカーを、ドイツのBMWが現代のテクノロジーでもってリバイバルさせたモデルです。2002年に最初のリバイバル版ミニが登場し、現在は2014年にデビューした3代目のミニが販売されています。

エクステリアとインテリアは、見てのとおりのポップなニュアンスに満ちているのですが、決して「軽い感じのポップさ」ではなく、「自動車というものや英国文化の伝統にしっかりと根ざしたデザインに、現代の感性を加えて再解釈している」とでも言うべき“本格感”を感じさせるのが、この車の持ち味です。

写真は左ハンドルの本国仕様。日本仕様はすべて右ハンドルです

またボディカラーやインテリアの仕様なども非常に種類が豊富で、アフターパーツも多種多様なものが世界中で販売されているため、それらを組み合わせることで「世界でひとつの、自分だけの可愛さ」を作れるというのが、ミニに乗ることの魅力でもあるでしょう。

車としての出来も非常に素晴らしく、まるでゴーカートのようにビュンビュン走れるのですが、だからといって乗り心地が悪いなどの問題はなく、高速道路などでしっとりとしたのんびり巡航を楽しむこともできます。

エンジンやグレードはさまざまな種類がありますが、一番スポーティな「ジョン・クーパー・ワークス」というのは乗り心地がかなり硬いため、一般的にはあまりおすすめできません。それ以外ならどれでもいいのですが、中間グレードの「クーパー」というやつで、基本的には十分でしょう。

執筆者
伊達軍曹

外資系消費財メーカー勤務を経て出版業界に転身。自動車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。以来、有名メディア多数で新車および中古車の取材記事を執筆している。愛猫家。
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  • <公開日>2023年4月5日
  • <更新日>2023年4月5日