日産 ノートの販売が好調だ。2022年4月~9月の販売台数を見ると、軽を除く登録車のランキングで第3位に付けている。1位のトヨタ ヤリスはヤリスとヤリスクロスを合わせた台数だし、2位のカローラもセダンとツーリング、スポーツ、アクシオ、フィールダーの合算だから、単独ではノートが第1位と言っても過言ではない。日産車がトヨタ車に対してこれほど健闘するとは、すばらしい快挙だ。
ノートは、コンパクトカークラスの中ではもっとも価格帯が高いが、それでも売れているのは、おそらく高級感がクラスダントツだから……という推測を以前書いたが、それは正しかったようだ。なぜなら、後に追加されたノートの高級バージョンである日産 ノート オーラ(以下オーラ)の販売が、これまた絶好調だからだ。
ノートの販売台数は、ノートとオーラを合わせたものだが、2022年の実績では全体の約4割をオーラが占めている。価格はオーラのほうが約42万円高いにもかかわらず、だ。
ではこの2台、何がどう違うのか。まずはそれをおさらいしよう。
【目次】
街中での走りはほとんど大排気量スポーツカー!
オーラは、前述のようにノートの高級バージョン。ノートに比べるとデザインや機能など、あらゆる面で質感が高くなっている。
パワーユニットは、ノートと同じシリーズハイブリッドのe-POWERのみ。直列3気筒1.2Lエンジンで発電機を回し、その電気でモーターを駆動して走る。エンジンやモーターはノートとまったく同じだが、制御の変更によってパワーはかなり上がっている。ノートの116psに対してオーラは136ps。約2割のアップだ。
e-POWERの駆動力はすべてモーターによるものなので、その点はEV(電気自動車)と同じ。モーターは停止状態から最大の加速力が得られるので、ゴー・ストップの多い街中では、同クラスのガソリン車やパラレルハイブリッド車(トヨタ プリウスなど)に比べると、2倍くらい「速い!」と感じる。オーラはノートよりもさらに2割ほど速いのだから、街中ではほとんど大排気量スポーツカーだ。
その分e-POWERは高速道路での追越し加速が苦手なのだが、日常域では断然痛快。これが、ノートを始めとする日産e-POWER軍団の快進撃を支えている。
エンジンは発電のみを行い、エンジンが作った電気で動くモーターが車を駆動させるというのが日産の「e-POWER」
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標準装備されるアイテムのレベルもきわめて高い
オーラは、遮音性能も優秀だ。ノートでも十分静かだが、オーラはさらに静かで、ほとんど高級車のレベルにある。
オーラは標準装備も充実している。たとえば、ハイビーム時に対向車などの眩惑を抑えるアダプティブLEDヘッドライトシステム。暗い田舎道の走行時には自動的にハイビームに切り替わり、対向車や前走車を検知すると素早くロービームに戻してくれる優れものだ。これを一度体験すると、安心感のとりこになる。
アダプティブLEDヘッドライトシステムはオーラの全車に標準装備
加えて、斜め後方の並走車両の存在を知らせる後側方車両検知警報や、車両の周囲を上空から見たような映像で表示するインテリジェントアラウンドビューモニター、液晶表示のインテリジェントルームミラー、アルミホイールも標準装着だ。これらの装備はノートの場合、最上級の「X」でもすべてメーカーオプション扱いとなる。
ただし、高速道路でアクセル、ブレーキ、ハンドル操作をクルマがアシストするプロパイロット(アダプティブ・クルーズ・コントロール機能)はノート同様、40万円強のセットオプション扱いになっている。この装備は、高速道路で頻繁にアダプティブ・クルーズ・コントロールを使わない限り、それほど意味はない。いわゆる「自動ブレーキ」は標準装備なので、街なか中心で使うのであれば装備しないのが吉だろう。
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ノートと形は似ているが、内外装の質感はかなり異なる
ノートとオーラの価格差は、前述のように約42万円だが、これら装備の差を吟味すると、実質的な価格差は約16万円になる。
この16万円は、前述の馬力の差に加えて、内外装の質感の差と考えるとわかりやすい。仮に馬力の差を8万円分とすると、オーラのルックスには、残り8万円分の価値があるかどうかが分かれ目となる。ノートとオーラのルックスには、実際のところ、どれくらい差があるのか?
こちらが日産 オーラ
そしてこちらが日産 ノート
遠くから見ると、この2台は見分けるのも難しいが、近くで見比べると、差は歴然としている。ノートの外観もコンパクトカークラスとしては高級だが、ノートオーラは「十分高級」というより「高級車そのもの」と言っていい。
一番違うのはフロントマスクだ。仕上げが断然緻密になっていて、Vモーショングリルには、LEDポジションランプやシーケンシャルターンランプの機能を持たせている。リアコンビネーションランプもセレブ感のある横一文字形状。このあたり、ドイツ製高級車の雰囲気に近い。
また、ノートオーラの全幅は、ノートに比べて40mmワイドな1735mmとなっている。左右それぞれ、フェンダー部が2cmずつ出っ張っているだけなのだが、この2センチでボリーム感がかなり違って見える。こういったボリューム感もまた、ドイツ製高級車の得意分野。クルマはちょっと幅が広いだけで、ぐっと高級に見えてしまう不思議な乗り物なのだ。
オーラのリアビュー。写真下のノートと比べて左右2cmずつという車幅のわずかな差が、全体の印象を大きく変えている
こちらがノートのリアビュー。これも単体で見ると悪くないのだが、オーラを見た後では少々貧弱にも感じてしまう
「幅が広くて取り回しは大丈夫か?」と思われるかもしれないが、幅がギリギリの車庫入れ等を除けば、通常の運転ではこの程度の差は無視できる。左右2cmずつでこれだけ見た目の高級感が違ってくれば、むしろおトクと言っていいだろう。
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オーラのインテリアにただよう高級感はまさにホンモノの証!
内装もかなり違う。基本形状はノートと同じだが、オーラはインパネ上面にツイード調の織物が巻かれるなど、あらゆる部分に高級感がある。ノート内装の高級感はやや表面的だが、オーラの高級感はホンモノだ。
実際のインテリア各所に巻かれているステッチ付きのツイード調織物は、この写真で見る以上の高級感がある
個人的には、ノートとオーラのルックスには、8万円どころか30万円分くらいの差があるように感じる。つまり、オーラのほうが断然お買い得! ということになる。実車を見比べれば、多くの人が同じように感じるのではないか。でなければ、42万円も高いオーラが、ノートシリーズ全体の約4割も売れるはずがない。
オリックスカーリースで、ノートとオーラのかんたん見積を取ってみると、ETCとバックカメラ、ドラレコ、フロアマットを装備して、「いまのりセブン」で次のようになった。
●ノート:4万2130円/月
●オーラ:5万2800円/月
その差は月々約1万円。私なら迷わずオーラを選択する。クルマも人も、見た目は非常に重要なのである。
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執筆者
MJブロンディ(清水草一) - 1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。代表作『そのフェラーリください!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高はなぜ渋滞するのか!?』などの著作で道路交通ジャーナリストとして活動。
- <公開日>2023年1月31日
- <更新日>2023年1月31日