極端な話をすれば4人乗りの2ドアクーペでも、「家族でのお出かけ」はできないことはありません。しかし3~4人ほどのファミリーでどこかへ行くのであれば、スライドドアが付いているミニバンタイプが、なんだかんだ一番便利であることは間違いありません。
それでは、世の中に星の数ほど(?)存在しているミニバンタイプの車のなかから「どれ」を選べば、ファミリーでのお出かけはもっともっと楽しくなるのでしょうか? そしてそれらの車を手に入れる際にはどんな「オプション装備」を装着したら、満足度はよりUPするのでしょうか?
さまざまな意見があるとは思いますが、各種の車を乗り比べてきた専門家として「お出かけミニバンBEST 3」と、それぞれに付けるべきオプション装備を発表いたします。
●第3位:「スズキ ソリオ」+「全方位モニター付メモリーナビゲーション」
「お出かけミニバン」と言いながら、実はスズキ ソリオはミニバンではなく「コンパクトトールワゴン」と分類されることも多い、2列シート・5人乗りのコンパクトカーです。
しかしソリオが「箱型の便利な車」であることは間違いなく、近年は少子化により3列シートは不要なご家族も多いはず。ということで、ここでは「スズキ ソリオもミニバンの一種である!」ということにさせていただきます。
で、通算4代目となる現行型のスズキ ソリオは「3~4人のファミリーでのお出かけ」をするうえでは本当に素晴らしい一台です。
まずは、全長3790mm×全幅1645mm×全高1745mmというコンパクトなボディサイズゆえに「機動力が高い」という美点があります。しかしそれでいて室内長2500mmを誇る車内は十分に広く、リアシートは後方へ最大で165mmスライドさせることができます(ついでに最大56°リクライニングさせることも可能です)。
そしてリアシートを目いっぱい後ろに下げた状態でも、荷室床面長は550mmという十分な寸法。ちなみにリアシートを一番前までスライドさせた際の荷室床面長は715mmに達します。
スズキ ソリオの室内。ボディはコンパクトだが、中はけっこう広い車だ
このように「コンパクトな割に車内は広い」というのがスズキ ソリオの美点となるわけですが、それと同様に、もしくはそれ以上に重要な美点となるのが「気持ちよく運転できる」ということです。
この種のコンパクトトールワゴンというのは「箱型で便利だけど、走りはまぁそれなりで……」という場合も多いのですが、スズキ ソリオは違います。スポーツカー並みに――と言ってしまうと大げさですが、とにかく意のままに、ドライバーのイメージどおりに加減速でき、そしてカーブなどを駆け抜けていける“箱型の車”なのです。
意のままに走れるということは「ドライバーとして気持ちいい! 楽しい!」ということにつながるわけですが、気持ちよく楽しく走れる車というのは、結果として「疲れにくい」ということにもつながります。
これとは逆の「疲れやすい車」というのは、長時間運転すると事故を起こしたり巻き込まれたりする可能性が増しますし、事故らないまでも、ドライバーが疲れて不機嫌になると、車内のムードは険悪になってしまうものです。そういった意味でも、スズキ ソリオは「家族で楽しく出かけられるミニバン」だと言えるのです。
●推奨オプションは「全方位モニター付メモリーナビゲーション」
そんなスズキ ソリオに付けるべきオプション装備は「全方位モニター付メモリーナビゲーション」でしょう。
スズキ ソリオの全方位モニター付メモリーナビゲーション画面
「全方位モニター付メモリーナビゲーション」とは、要するに7インチのメモリーナビによってさまざまなエンタメ機能とナビ機能、スマホを利用した機能、そして自車を真上から見ているような視点で周囲を確認できる「全方位モニター」が利用できる――というものです。
カーナビ機能は当然として、お出かけの際にはフルセグTVなどのエンタメ機能は欲しいところですし、高速道路のSA・PAなどで接触事故を起こさないためにも「全方位モニター付メモリーナビゲーション」は、ソリオでお出かけをするなら絶対に欲しい装備です。
●第2位:「ホンダ フリード」+「Sパッケージ」+「1列目シート用i-サイドエアバッグ システム+サイドカーテンエアバッグ システム〈1~3列目シート対応〉」
家族構成や積み込む荷物の種類によっては、「さすがにスズキ ソリオではちょっと小さすぎる」ということもあるでしょう。そんなときには、ソリオよりもひと回りないしは1.5回りぐらい大きな、しかし5ナンバー枠には収まるサイズのホンダ フリード(3列シート・7人乗り)またはフリード+(2列シート・5人乗り)がおすすめとなります。
2016年9月に発売された現行型ホンダ フリードは、5ナンバー枠のお手頃サイズなミニバンとしてはかなりの大ベテランなのですが、今なおけっこうな数が売れ続けている人気モデルです。具体的には直近の2023年4月、このカテゴリーでは一番人気である「トヨタ シエンタ」の販売台数が9195台であるのに対し、ホンダ フリードの販売台数は5340台。7年も前に発表された車の販売台数としては「驚異的」と言っていいでしょう。
出典: 乗用車ブランド通称名別順位 | 統計データ | 一般社団法人日本自動車販売協会連合会
ホンダ フリードが今なお売れ続けている理由は、一部改良やマイナーチェンジを通じて商品力を向上させ続けたからであるのと同時に、SUVスタイルの新グレードを追加したからでもあるのでしょう。
しかしもっと根本的には「シンプルでちょうどいいサイズの使える車」が、フリード以外にはあまり存在していなかったから――というのが、その長寿の秘密です。
前述したとおりの大きすぎず小さすぎずなボディのなかに、1.5Lのちょうどいいガソリンエンジンまたは燃費の良いハイブリッドシステムを搭載し、奇をてらったところのないシンプルビューティなデザインと、2列目キャプテンシートの360mmロングスライド機構やウォークスルーなどのインテリアを組み合わせ、そして普通によく走るホンダ フリードという車には、やっぱりなんだかんだで普遍的な魅力があります。
ホンダ フリードの車内はおおむねこのような感じ
ボディタイプは前述のとおり3列シート・7人乗りと2列シート・5人乗りの2種類があり、それぞれに「CROSSTAR」というSUVスタイルのグレードもラインナップされています。またパワーユニットも前述のとおり1.5Lガソリンエンジンとハイブリッドシステムの2種類が存在し、それぞれに「Modulo X」というスポーティな仕様も用意されています。
●ホンダ フリードの中間グレードに付けたいオプションは2種類
それらの各種グレードからどれを選ぶかは「好みと予算次第」で良いかと思います。が、もしもベーシックな「G」または「HYBID G」を選ぶのだとしたら、「Sパッケージ」というパッケージオプションは付けたいところです。
これはプライムスムース×ファブリックのコンビシート&専用インテリアと本革巻きステアリングホイール、15インチのアルミホイールなどがセットになったもの。GまたはHYBRID Gのビジュアルをビシッとランクアップしてくれます。
「Sパッケージ」を選択したホンダ フリードの車内。標準では「モカ」となる内装色が、Sパッケージではシャープなブラック系になる
またCROSSTARやModulo Xでは標準装備となる「1列目シート用i-サイドエアバッグ システム+サイドカーテンエアバッグ システム〈1~3列目シート対応〉」は、GまたはHYBRID Gではオプション扱いとなります。お出かけの際に万一の事故が起こらないとは誰にも断言できませんので、ご家族と自身の身を守るためにも、これは選択することをおすすめします。
1列目シートのエアバッグと、頭部を素早くカバーする1~3列目シートのサイドカーテンエアバッグが、すぐれた乗員保護性能を発揮する
●第1位:「トヨタ シエンタ」+「パノラミックビューモニター」+「シート表皮 ファブリック(消臭・撥水撥油機能付)」+「天井サーキュレーター」
大長寿モデルであるホンダ フリードが魅力的な「お出かけミニバン」であることは間違いありません。しかしフリードとほぼ同サイズ・同コンセプトであり、設計とデザインは丸々6年分新しいトヨタ シエンタのほうが、ほぼすべての部分において「ちょっとずつ優れている」というのは客観的な事実でしょう。
2022年8月に発売された3代目(現行型)トヨタ シエンタは全長4260mm×全幅1695mm×全高1695mmの、7人乗りまたは5人乗りとなるコンパクトミニバン。従来型では2列シート・5人乗りの仕様は「シエンタ ファンベース」という車名でしたが、現行型ではシンプルに「シエンタ(5人乗り)」という名前になりました。
パワーユニットは最高出力120psの1.5L直3ガソリンエンジンまたは同91psの1.5L直3エンジンに同80psのモーターを組み合わせたハイブリッドの2本立て。いずれのユニットも家族でのお出かけには十分な力を発揮します。
「さわやかな上質感」が感じられるトヨタ シエンタのインテリア
「運転自体の楽しさや気持ちよさ」という点においては若干の希薄さも感じますが、だからといって何か問題があるわけではありません。安定感等は普通に十分であり、乗り心地にも「設計年次の新しさ」ゆえの優位性を感じます。そして最小回転半径がホンダ フリードの5.2mに対してシエンタは5.0mであるという点も、この車のストロングポイントといえるでしょう。
そのほかでは、ホンダ フリードの3列目シート格納方法が「左右への跳ね上げ式」であるのに対し、トヨタ シエンタの3列目は2列目シートの下側にダイブダウン格納されますので、荷室を広く使うことができます。とはいえ「荷室をいつでも広く使いたい」という場合は、そもそも2列シート・5人乗りの仕様を選べばいいだけの話なので、ここは決定的なポイントではないかもしれませんが。
●中間グレードに装着したいオプション装備はとりあえず3種類
そんなトヨタ シエンタのグレードはベーシックな「X」と中間の「G」最上級にあたる「Z」という3種類に大きく分かれています。そのなかでベーシックなXはさすがに装備類や見た目がちょっとベーシックすぎるため、程よい中間グレードである「G」を選択するとしたら、ぜひ付けたいオプション装備は以下のとおりとなるでしょう。
●パノラミックビューモニター
スズキ ソリオの項でも触れましたが、お出かけ時の高速道路SA・PAなどで無駄に接触事故を起こさないためにも、自車を真上から見るように周囲を確認できるパノラミックビューモニターは、ないよりはあったほうが絶対にいい装備です。最上級グレードであるZには「床下透過表示機能付き」というパノラミックビューモニターがオプション設定されていますが、Gで選択できる普通のパノラミックビューモニターでも十分です。
●シート表皮 ファブリック(消臭・撥水撥油機能付)
消臭・撥水撥油機能付きのファブリックシート。写真の車種はシエンタ(5人乗り)
「お出かけミニバンだけど、車内は飲食厳禁とする」というのはナンセンスです。せっかくのお出かけですから、みんなで仲良く車内での飲食を楽しむべきでしょう。そしてそんなときにもシートが汚れてしまう可能性を最小限にできるのがコレです。最上級グレードのXには標準装備ですが、中間グレードのGならオプションとして装着できますので、ぜひご検討ください。なおこのオプション装備は、後述する「天井サーキュレーター」ならびにナノイーとセットとなるメーカーオプションです。
●天井サーキュレーター
高級車と違い、後部座席にエアコン吹き出し口がないコンパクトミニバンでは、2列目や3列目に座る家族のための「天井サーキュレーター」があると重宝します。トヨタ シエンタのGとXでは、これをオプション装備として選択可能です。
天井サーキュレーターに関しては「安価なハンディ扇風機とかをクリップで留めて使えば十分ではないか?」との意見もあるかもしれません。
それはまあそのとおりなのですが、「美観」というものと、「100km/hぐらいで走行している際に急ブレーキをかける自体が発生し、クリップで留めた小型扇風機が前方に吹っ飛んでいったらかなり危険」という観点から、純正オプション品の装着を推奨いたします。
またこれらのほか、スーパーUVカット・IRカットガラスやシートヒーターなどがセットになった「コンフォートパッケージ」というパッケージオプションも、できれば付けておきたいシエンタのオプション装備です。Gグレードの場合で9万3500円と若干値は張りますが、快適なお出かけのためには“必要経費”と考えるべきかもしれません。
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執筆者
伊達軍曹 - 外資系消費財メーカー勤務を経て出版業界に転身。自動車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。以来、有名メディア多数で新車および中古車の取材記事を執筆している。愛猫家。
- <公開日>2023年7月10日
- <更新日>2023年7月10日